「自由ポータルZ」に掲載された記事を振り返ってみる

 

2022年1月。自由ポータルZに送った記事が5回目の入選をした。そして今、デイリーポータルZに体験執筆として2本の記事を送り出し、少し一息ついているところだ。そんな今だからこそ、自由ポータルZを振り返ってみたい。

今回は自分の足跡を辿ってみます。

 

おもしろ記事が好きだった

ムダにも見えることを全力でしているネットの文章が好きだった。自分もなにか楽しいことをしてみたい。そう思って大学では広報誌を作る委員会に入った。割と自由な雰囲気の組織で、記事のためにサバゲーをしたり徹夜をしたり東京から江の島までチャリで旅行したりとたくさんの思い出ができた。もちろん大変なことも多かったけどそれはそれ。

せっかくだから卒業前に力試しをしてみたい。そんなとき目の前に現れたのがオモコロとデイリーポータルZ共催の「おもしろ記事大賞」だった。最後の春休みを使ってこのブログを立ち上げ、散歩して拙い文章をひねり出し、応募ボタンをぽちり。

tenyard.hatenadiary.jp結果はまさかの佳作! こうして満足感とともに社会人生活が始まった。

 

慣れない仕事に忙しい日々。文章は書き続けていたい。でも何を書けばいいんだろう。そこで、とりあえずガジェットのHPを作ってみることにした。しかし、続けていて見えてきたのは「記事は書けるけど自分が楽しめてないな」という悲しい事実。

そのせいというわけではないけど、いわゆる「おもしろ記事」っぽいやつも気が向いたときに書いていた。年に一本ぐらいのペースだ。

文章を書くためにはネタが必要だ。自分が楽しめる、没頭できるものを見つけたい。そう思って色々手を出してみた。登山道具をそろえてみたり、暗渠道について深く調べてみたり、幅広くスマホゲームを試してみたり。

しかし、見えてきたのは「全部深くまでできない」という悲しい事実だった。登山をしても毎週行くようなモチベーションにはならなかったし、暗渠もすでに本を出しているような人には敵わないしそこまでの熱意はない。スマホゲームも飽きた。

結局わかったのは、「自分は一つのことを深めるのに向いていない」ということ。じゃあ自分が楽しめる場所はないのか。これという趣味がないから、卒業後に増えたツイッターのフォロワー数は0だ。

何か自分の核がほしい。

 

新人賞に応募しよう

閉塞感を感じながらも、細々とおもしろ記事を仕上げようとしていた日のこと。「DPZ新人賞2020」が目に入った。

dailyportalz.jp

ときはコロナ禍。遠出もできないしやってみるか。

結果は落選。でも、中間発表では選ばれた。さらに自由ポータルZに応募したら入選した。ここで気づいた。もしかして、このままおもしろい記事を書いてたらいけるんじゃないか? よし、もっと書いてみよう。

こうして新しい挑戦が始まった。

 

掲載されていた記事を振り返る

さて、ようやく本題だ。自由ポータルZに載った記事を振り返っていこう。送ったのは全部で13本。そのうち掲載されたのが10本だった。当時の心情とともにお送りします。

(題名が記事へのリンクになっています)

 

1. 杉並に点在する「遊び場」の正体に迫る!(入選)

dailyportalz.jp先ほども紹介した通り、最初に手ごたえをつかんだ記事だ。あまりに構成が難しくて読みやすさまでまったく手が回っていなかった。ただ、当時の自分のベストは出し切れたので悔いはない。

論文みたいに固い記事だったけど「おもしろがり」の力を評価してもらえたのが心に響いた。そして課題が見えた。今自分に足りないのは文章をおもしろく書く力だ。そこで、noteを開設し文章を毎日更新する挑戦を始めることにした。

 

2. 中野に大正時代の刑務所の跡が残っていた(もう一息)

noteの毎日更新を1.5か月続け、ちょっとは文章力が上がってきた。そんなときネタ探しに古地図を眺めていると、中野駅の近くに謎の建物があるではないか。調べると、当時刑務所があったという。さらに、「レンガ片が残っている」という噂も見つけてしまいこれは私、気になります! 実際に行ってみると、そこに広がっていたのは想像を上回る光景だった。これはいける。よし、書こう。

なんとかできた。今回からは、大学の友人に見せることにした。一緒に編集をしていただけに容赦ないアドバイスをもらえる。ダメージは受けるけどめちゃくちゃありがたい。修正し、公開だ。

dailyportalz.jp結果は「もう一息」。今回驚いたのがアドバイスの熱量だ。「盛り上がる記事の書きかた」「おもしろい文章の書きかた」を長文でめちゃくちゃ具体的に書いていただけているではないか。これは活かすしかない。

 

しかもこの記事、あとからちょっとしたご褒美があった。はてなブックマークでちょっとバズったのだ。3桁もブックマークがついてコメントにはたくさん肯定的な感想がずらり。よし次もやるぞー。

 

3. 防災無線は地域の歴史の生き証人だ(入選)

DPZの18周年記念に合わせて、自由ポータルZで「棒」の記事を募集するという。何を書こうか。ふと浮かんだのが、「遊び場」を調べていたときに見つけた不思議な防災無線の姿だった。

決まればあとは実行のみ。防災無線を見に近所を歩き、ネットの情報をもとに埼玉まで遠征した。前回のアドバイスを活かし文章と構成をひねり出して、形ができあがった。

dailyportalz.jp結果は入選! しかも前回の改善点を意識して書いたところもほめていただけているではないか。現状の課題も見つかり、さあ次もがんばるぞ。

このあたりから、「入選5回目指してみるか」と意識するようになった。

 

4. 一人で「だるまさんがころんだ」をしたら友達ができた(もう一息)

大学で広報誌を書いていたメンバーと通話をする機会があった。そのとき、同じ題材でそれぞれ記事を書いてみようかって話になり新しい企画が立ち上がった。

決まったテーマは「一人でできるかな」。コロナで集まれないから一人で楽しめることをやってみようって流れだ。そこで、今回はじめて工作系のテーマに取り組むことにした。

工作の能力はないけど作るのは好きだ。こうして生まれたのが「一人でだるまさんが転んだ」をするゲームだ。できたはいいけど楽しんでもらえる構成が思いつかず、今回も頭をひねり続けた。その結果生まれたのがだるまくんに人格を持たせる構成だ。さて、おもしろがってもらえるかな。

dailyportalz.jp結果は「もう一息」……。直していて自分でも何がおもしろいかわからなくなっていたし、仕方ないか。

 

しんみりしていたら、思わぬ方向から反応があった。何となくニコニコ動画に上げてみたら運営さんにピックアップしてもらえたのだ。

news.livedoor.comまさかライブドアニュースデビュー! おもしろがってもらえたみたいで良かった。

 

5. 都会にある沖縄の魔除け「石敢當」が個性的でおもしろい(もう一息)

2021年になった。今年の目標は「入選5回の達成」だ。noteでこっそり宣言した。

次は前から気になっていた「石敢當」をテーマに書こう。防災無線のために遠征したときとか散歩でちょこちょこ目に入っていて、気になっていたんだよね。

dailyportalz.jpもう一息だったけど、割と悪くなかった出来だと思う。ただ今までの記事と違って熱意は少なかったかも。

 

この記事で5か所の石敢當を紹介した。そのあとも記事のネタのために東京の様々な場所を散歩し、1.5年がすぎた。しかし、石敢當はあれから2か所しか新たに見つかっていない。なぜ5か所も普通に見つかったのか、今思うと不思議だ。

 

6. 川沿いにあるスピーカーの謎を解いたら洪水との戦いが見えてきた(入選)

2回連続のもう一息。次の方針を考えていたとき、「オモコロ杯2021」の発表があった。結果は防災無線の記事が銅賞に! しかし心は晴れない。本当にこれで良かったんだろうか。おもしろい記事じゃなくて受けやすい記事を送ってしまったんじゃないか。

omocoro.jpよし、今度は受けるかじゃなくて自分のやりたいことをとことんやってみよう。頭に浮かんだのが「水位警報機」だった。

やることが決まった。しかしこれまた調査が大変で、資料が少ない上に散らばっていて着地点が見えてこない。川と図書館とネットの海を泳ぎ回る日々。構成もこんがらがってどうすればいいんだ。

でも、思いつめることはなかった。遊び場をまとめられた自分ならできる。なによりパズルのピースを埋めるみたいで楽しい。こうして新しい記事が生まれた。

dailyportalz.jp結果は入選! 手ごたえがあっただけにそっとガッツポーズをした。

 

後日この記事をオモコロ2022に送ったら銅賞を受賞できた。思い出の記事だ。

 

7. 阿佐ヶ谷駅にある張りぼての「素朴さ」を愛でる(入選)

たしか2018年だっただろうか。自由ポータルZのアドバイスに「定点観測してみよう」とあった。楽しそう。そう思い当時やってみたけど、掲示が中断されてしまい書きそびれていたネタがあった。しかし、夏のある日にその場所を通ると復活しているではないか。これは書くしかない!

記憶をたどり必死におもしろさを練り、脚色を加え、問い合わせをしてできあがったのがこの記事だ。

dailyportalz.jp入選でべた褒めされている! このとき投資の勉強をしていて、記事書いててもお金にならないから別のことをしたほうがいいんじゃないかと考えたりもしていた。でも、3回入選したし書いてて楽しいからこのまま続けよう。そっと背中を押してもらえた。

 

8. 「けなげ組」がいなくなってさびしいからAIの力で新しく作りたい(もう一息)

街歩き要素のない記事、その2。

今まで記事を書いていて気づいたものがある。どうやら自分は「防災無線」とか「石敢當」とか、普段人が気づかないようなものにスポットを当てたくてたまらない性分らしい。つまり、「けなげなもの」が好きということか。はっ! けなげな存在、亀田の柿の種にいたよね。

調べてみると5年前に幕を閉じ、さらにけなげな存在になっていた。ならば僕がスポットを当てるしかない。みなぎるやる気。こうして無理やり(?)ひねり出したのがこの記事だ。

dailyportalz.jp「もう一息」だったけど、自分でも構成がもっと良くできそうと思っていたのでこれは納得だ。ちなみに、けなげ組への想いが高じてそのあと番外編の記事を二本も書いている。

 

この記事、狂気記事王決定戦に応募したら優秀賞を受賞した。世界に届け、けなげ組の良さ!

 

9. 「ご自由にお持ちください」を観察すると「人生」が見えてくる(もう一息)

街歩きしていておもしろそうなものを写真に撮っていて、「ご自由にお持ちください」の写真がたまってきたのに気づいた。となるとあとは切り口だ。考えた結果、「その持ち主の人生が見えてくる」ことに着目して書くことにした。石敢當もそうだけど、こういう紹介記事は構成がシンプルで書くのが割と簡単だ。

dailyportalz.jp結果はもう一息。書くのは簡単なだけに、もっとおもしろがってもらえるようサービス精神旺盛で書いたほうがいいか。また新しい視点がもらえた。

 

10. 天下一品カップ麺を「天下一の環境」で味わおうとしたらやりすぎた【反省】

2021年が終わった。実はこのあと一つ記事を書いたけど、まさかの選外……。三作連続で入選を苦し、年内5回の目標は未達成となってしまった。次こそは入選したい。よし、次は久々にガッツリ街歩き調査をやりますか。11月と12月は土日にひたすら東京の街を歩き回った。ネタもそろった。しかし、いつものことだけど構成が難しい。時間だけがすぎていく。

 

そんなとき、弟に初日の出を見に行くことを誘われた。せっかくだから記事のネタになることしたいな。そうだ、天下一品カップ麺が発売されたんだっけ。山頂で食べたらおいしそう。

こうして軽い気持ちで実行した登山は、計画・道具・体力ともに反省点ばかりのものとなってしまった。ギリギリやりたいことはできたけど、これ書いたら山好きの人に怒られるやつだ……。

でも書かないのはもったいないからとりあえず作ってみるか。最近調査ばっかりして頭が凝り固まってるし、気分転換にちょうどいいや。こうして肩の力を抜いて新記事ができた。書いてて楽しくなってきたし、自由ポータルZにも送ってみよう。

dailyportalz.jpまさかの5回目入選だー! 「人生をオリジナルな方法でエンジョイしている素敵な記事」ってすごくほめられてる気がする。

ただこの記事、アドバイスを読んで反省した。もっといい記事の終わらせ方があったなと。そういう意味では、今日紹介した中では一番手直ししたい記事だったりする。

ちなみに、情報を集めていた街歩き記事は戦争の話がからんでいるため、しばらくは寝かせておく予定だ。

 

振り返ってみて

その気になって文章を書くようになってから2年がすぎた。「一つのことを深めることができない」という自分の弱みは、気づいたら「色々なことに興味を向けられる」という強みになっていた。一人も増えていなかったフォロワーは記事つながりでちょっとずつ増えていき、一部の人とは実際に会うまでになった。

明らかに張り合いができて毎日が楽しくなった。ありがとう。

 

改めて振り返って感じたのは、「自由ポータルZ、すごい」の一言だ。プロの人が無料で自分一人へ向けてアドバイスしてくれる機会なんて普通はない。無料でいいんですか。しかもそのおかげで文章や構成から小手先のテクニックまで本当に多くのことを吸収できた。本当にありがたい場所だ。

あとは、「なんだかんだ楽しんで書いてたんだな」ということも発見だった。これを書く前に頭の中で振り返ると、いい文章が書けず苦しんでいたことが印象に残っていた。でも実際はそれだけじゃなかった。毎回ワクワクするテーマを見つけてパズルのように構成を考え、苦しみながら文章を書いたあと、時にほめられて舞い上がる。楽しいからこそ10本+αも続けられたんだろうな。

もし少しでも「おもしろい記事を書いてみたい」って人がいれば、自由ポータルZ、オススメです。