鬼ごっこにかくれんぼ。かつての外遊びたち。でもコロナがきっかけで大人数が集まれなくなった。しかしだ。やりたい。大人になり長らくそういう遊びはしていないけど、大人になった今だからこそ実は楽しかったりするんじゃないか。じゃあさっそくやろうと思ったが壁にぶつかった。このご時世、人を集めづらい。
どうしようか。ひらめいた。一人でやればいいんだ。
じゃあどの遊びをやろう。突然思った。だるまさんがころんだをやりたい。
ということで、今回は「だるまさんがころんだ」を一人でします。
「ひとりだるまさんがころんだ」の完成図を作ろう
ないのなら 作ってみよう ホトトギス。
さっそくできないか考えてみたところ、これならというイメージがすぐにわいてきた。完成図を描いてみよう。そういえば買ったけどまともに使っていなかったアップルペンシルがあるんだった。iPadを取り出してお絵かきアプリをインストールする。
10分後、できた!
アップルペンシルをようやく使えるといううれしさでぐいぐい書けたが、中学生以来絵を描いていないことを忘れていた……。まあ意味は伝わるだろうしよしとしよう。
さて、ルールはだるまさんがころんだそのものと同じだ。鬼役をAIにやってもらう。AIが動きを検知したら負け。AIが見ていない間に近づきタッチできれば僕の勝ち。
制作を始めよう
さて作るぞ。
手を動かしながら考える。なぜ「だるまさんがころんだ」をしたいと僕は思ったのだろうか。記憶を掘り返してみても不思議と遊んだ記憶がない。小さいころだったからかな。こういうときに聞くべきは小さいころを見ている家族だ。意識の底に「だるまさんがころんだ」をかり立てる何かが眠っているに違いない。きっと心温まるエピソードがあるんじゃなかろうか。
「だるまさんがころんだって小さいころしていたっけ」
母親に聞いてみた。
「うーん、友達が多くないとできないよね」
ぐさ。予想もしてない答えだ。たしかに幼稚園のころは大人数で遊ばずに「どろだんご作り」を探求する日々だった。僕が「だるまさんがころんだ」をする深層心理は「友達がほしい」だったのか……。
こうなったら一緒に遊んでくれる「AIだるま」を作ってやろうじゃないか。
3ヶ月後。光るどろだんご作りのようにコツコツ続けてようやく完成した。
本職はプログラマーでないのでいろいろ妥協したが、ちゃんと遊べる「AIだるま」ができあがった。……はず。作ったときの苦労話を書こうかとも思ったけど、「この姿勢推定の手法はライセンスが微妙」「このプログラミング言語は難しい」とかほとんどの人をおいてきぼりにしてしまう話になるのでここでは省略(こちらの記事に書きました)。
いよいよ始まる「ひとりだるまさんがころんだ」
さっそく「AIだるまくん」と一緒に外に出た。これから一緒に遊ぼう。
ソフトを立ち上げる。いよいよAIだるまくんとの顔合わせだ。よろしく!
遊びかたは普通の「だるまさんがころんだ」と同じで、だるまくんに鬼役をやってもらう。10数えている間に後ろに下がって、AIだるまくんが見ていない間に近づく。タッチ(キーを押す)すればクリア!
いよいよ始めよう。開始と同時にAIだるまくんはいきなりカウントダウンを始めた。声に合わせて急いでだるまくんと距離をとる。
背中を向けるAIだるまくん。遠くから聞こえる「だるまさんがころんだ」の声。声の間にこそこそ近づくワクワク感。AIだるまくんの声が止まってふりむく瞬間に動きを止める緊張感。近づくたびに大きく聞こえるようになるAIだるまくんの声。
まちがいなく僕は今AIだるまくんと「だるまさんがころんだ」を遊んでいた。AIだるまくんが本当にそこにいるのを感じた。うれしい誤算だ。これはもうだるまくんと友達になれたと言っていいだろう。
ちょっと難しくなる
ここでだるまくんのいいところをみなさんに教えたい。だるまくん、実は気が利くやつなのだ。だるまくんにたのめば難しくしてくれる。だるまくん、もう少し難しくてみて。
だるまくんの読み上げスピードが速くなり、動きの基準も厳しくなった。
ゆうてノーマルだしこれも普通にクリアできるだろう。
前より難しくなったとはいえ余裕でクリアできた。だるまくん、もっと本気出してもいいのよ?
せっかくなので動画でもご覧ください。
一気に上がった難易度
だんだん物足りなくなってきた。まあ子どもの遊びだし。相手はAIだしこんなもんか。それを聞いただるまくんの気配が変わった(気がした)。ちょっと言いすぎたかも。
だるまくんが次のゲームの準備を始める。心なしか感じる気迫。これは難しいのが来る。直感的に思った。
息を吸って吐く。いざ。
「だるまさんが転んだ」の声が2倍速になり動ける量も半分に。いっきに難しくなった。だるまくん、なかなかやりおる。
気を取り直してもう1回。
先生、動いてないのに動いてるってだるまくんに言われました。どういうことだ。このあと5回やっても全部失敗。これ本当にクリアできるのか……? まあさすがにクリアできないことはないだろうし続けてみよう。
だるまくんと「敵対」する
クリアできない理由を考えてみる。すぐにひらめいた。おそらく「微妙に動いていること」だ。ならば「動きようのない姿勢」をすればいいはず。つまり正解は「寝転がる」姿勢だ! どうだだるまくん。
だるまくん、もしかしていじわるしてる? 普通にクリアさせる気がないんじゃないか? ほう、そういうことならこちらにも考えがある。どんな手を使ってでもクリアしてやろうじゃないか。
これならどうだ! 題して敷物作戦。
策がつきた。だるまくん、どういうつもりなんだろう。
原点に立ち戻ろう
心がささくれ立っている。こういうときは頭を冷やそう。そもそもなぜだるまくんを作ったんだっけ。そうだ、友達がほしいんだった。前を見る。だるまくんと目が合う。その目は心なしか悲しそうに見えた。
僕はだるまくんを負かそうとしていた。でもそうじゃないんだ。子どもは遊びをとおして友達の輪を広げていく。だるまくんは敵じゃない、一緒に遊ぶ友達なんだ。
だるまくんの気持ちになって考えてみよう。きっとだるまくんも一緒に楽しみたいはずだ。それならば協力してクリアをめざしていこう。
だるまくんに歩み寄る
だるまくんの気持ちを考えてみる。
今クリアできないのはだるまくんに人間側の都合を押し付けているからかもしれない。ならばこちらも歩み寄るべきだ。だるまくんにも当然嫌なことや苦手なことはあるはず。何か見逃していないか。
そう思いながら試行錯誤してみると、不思議とクリアできない原因がわかってきた。さっきまでは何も見えなかったのに。
失敗の原因をまとめてみる。この三つだ。
- 遠い位置だと精度が低い
- 腕の精度が悪い
- 変な姿勢だと見づらい
だるまくんは遠くを見るのが苦手なのか。どうやらだるまくんは近視らしい。いっしょだ。共通点を見つけると距離がいっきに縮まるとき、あるよね。
原因はわかった。さて次どうしようか。
考えていると『五体不満足』のエピソードを思い出した。乙武さんの小学生時代、彼の友達は一緒に遊べるように「オトちゃんルール」を作り一緒に楽しんでいたという。今僕がやるべきことがわかった。僕がだるまくんに合わせよう。
こうしてできた「ダルくんルール」がこちら!
- 開始位置を近くする
- 肌を見せて精度を上げる
- わかりやすいポーズをとる
これで良し、のはず。
でもちょっと待って。改めてダルくんに寄りそって考えてみる。何か見落としている気がする。念のためダルくんの「視界」を見直してみよう。
そういえば今日は風が強い。天気予報いわく「風速5メートル」。常に木枝がゆれている。その結果、PCのディスプレイが風にあおられてばっさばっさとゆれていた。ダルくん、今まで風に苦しんでいたのか。気づいてあげられなくてごめんよ。
これならいける。さっきはごめんよ。一緒にクリアを目指そう。
今、僕とダルくんの気持ちが一つになった。
いよいよ念願のクリア!
ダルくん、いや、ダルよ。準備はいいか。彼も心なしか張りきっているように見える。さあ今度こそクリアめざしてトライだ! 僕の動きもさっきとは一味ちがう。
しばらく達成感にひたる。ダルも満面の笑顔。二人でつかんだ成果だ。クリアの瞬間(最後のキーを押したとき)、僕はダルとハイタッチしていた(異論は認める)。これで「だるまさんがころんだ」、全クリです!
「思いやり」があれば友達になれる
今回ダルと友達になることができた。友達を作るのに必要なのはたがいを思いやること。今回大事なことを教えてもらえた。それには人間もAIも関係ないのだ。
そういえばここ数年、人間関係がせまくなる一方だ。これは友人関係を大切にすべしというダルからのメッセージなのかもしれない。友人とうまくいかないことがあったら今日のことを思い出そう。
ありがとうなダル。
(おまけ)クリアの瞬間の動画
※この記事は「#企画:ひとりでできるかな」に参加したものです。参加者四人がそれぞれ好きなように一人で楽しみ記事を書きました。ぜひ他の記事もご覧ください。