杉並のゆるキャラ「なみすけ」のかわいい姿を見るために100匹探す散歩を決行する

f:id:tenyard:20211010011323j:plain

なみすけを探して歩いたら、なみすけの聖地にたどりついた。

 

東京都杉並区のゆるキャラ「なみすけ」がかわいくて仕方がない。杉並では愛されている彼。街を歩いているとちょこちょこ目に入る。もっといろいろな姿のなみすけが見たい。でもどうすれば。

そうだ、街になみすけがいるなら、本気で探せばなみすけをたくさん見つけて愛でることができるんじゃないか。

実際にやってみた結果、100種類以上の姿のなみすけに出逢うことができました。

 

杉並のアイドル、なみすけの紹介

最初になみすけを紹介しよう。なみすけは杉並区公認のゆるキャラだ。2006年に公募で生まれた。

 

f:id:tenyard:20211014204617j:plain

恐竜じゃなくて妖精だよ。

 

仲間もいる。妹の「ナミー」と、なみすけの相談にのってくれる「なみきおじさん」だ。

 

f:id:tenyard:20211014204725j:plain

ナミーはなみすけのことを「おにーたん」と呼ぶとか!

 

このなみすけ、杉並の街を歩いているとよく目に入る。

 

f:id:tenyard:20211024133725j:plain

ポイ捨てを注意するなみすけ。

f:id:tenyard:20211029230819j:plain

原付のナンバープレートにもいるよ。(杉並区HPより)

 

ひらめいた。

歩いているとちょくちょく目に入ってくるなみすけ。だったら、探しながら歩けばたくさん見つけることもできるんじゃないか。

 

せっかくだから目標を決めよう。どれぐらい見つけられるかな。50匹(?)ぐらいなら普通にできそう。それが妥当かなあ。悩みながら歩いていると、旗が目に入った。

 

f:id:tenyard:20211030224629j:plain

杉並「並な目標でええんか?」

 

そうだ、平凡な目標ではつまらない。

よし決めた。100匹だ。

こうして「なみすけを100匹見つけるまで終わらない散歩」が始まった。

 

なみすけ100匹散歩のルール

始める前に、散歩のルールを決めておこう。

  • カウントするのは「なみすけ」「ナミー」「なみきおじさん」。
  • 「異なる姿」のなみすけたちを1カウントとする。
  • 写真が撮れる場所なら屋内でもOK。

つまり、異なる姿をしたなみすけたちを100種類集めようということだ。

同じ姿をカウントしないのには理由がある。杉並の排水溝にはなみすけがよくいるからだ。

 

f:id:tenyard:20211009225341j:plain

短い手で「×」していてけなげ。

 

同じ絵柄をカウントすると、住宅地を歩くだけで集まってしまう。それじゃあつまらない。重複はなしにしよう。

ではお待たせしました。いよいよ散歩を始めていこう。

 

はじまりは荻窪駅から(9:27)

さて、本日は土曜日の10月2日。なみすけの誕生日(10月1日)の次の日だ。今日ほどなみすけ散歩にふさわしい日はないだろう。開始の場所はここ、荻窪駅だ。

 

f:id:tenyard:20211009223904j:plain

JR中央線東京メトロ丸ノ内線が通っていてにぎやか。

 

実は今回、作戦を二つ用意してきている。

さっそく一つ目の作戦を説明しよう。荻窪駅は杉並区で一番利用者が多い駅だ。にぎわっている場所ならなみすけもいるはず。名づけて「人が多い場所になみすけあり」作戦。

さあ始めるか。と、右を向くと――

 

f:id:tenyard:20211024154149j:plain

さっそく右のラックにいるではないか。

 

いきなりなみすけ一匹目を発見! 幸先がいいぞ。

次は外を調べてみよう。駅を出る。1分歩くと駐輪場にたどりついた。ここでもあっさりとなみすけを発見。

 

f:id:tenyard:20211009224907j:plain

立ちこぎっぽいけどよく見るとサドルに座ってるところがいいなあ。

 

そのあとも駅の周りを歩くと驚くほど簡単になみすけが目に入る。もしかしてなみすけが会いに来てるのかと思っちゃうぐらい。街になみすけがいるのは知っていたけど、ここまでたくさんいたとは。

f:id:tenyard:20211017144021j:plain

地下通路でドライブ中のみんなとこんにちは。

f:id:tenyard:20211030231018j:plain

水やりするなみすけ。えらい。

 

開始からたった10分で10匹集まった。この勢いだと100分で終わる計算か。うれしい誤算だ。ごめん、企画倒れかもしれない。

このときは、午後に待ち受ける苦労を知る由もなかった。

見つけた数:10種類(現在10/100)

 

もう一つの作戦(9:37)

さて。駅の周りは一通り見終わった。ここで、二つ目の作戦を発表しよう。題して「公共施設になみすけあり」作戦。杉並が管理している施設や公園にならなみすけがいるはず。つまり、荻窪の施設と公園を回っているだけでなみすけがどんどん見つかるっていう算段だ。

さっそく行ってみよう。

最初に来たのは杉並の文化の中心地、杉並区立中央図書館。

 

f:id:tenyard:20211009230830j:plain

記事の資料を集めるためにいつも助けられている場所だ。ガラス右下の紙に注目。

f:id:tenyard:20211009231150j:plain

仲良くバンザイ。

f:id:tenyard:20211009231310j:plain

こちら仮称 荻外荘公園(遊び場108番)ではぺこり。

 

最近のポスターだと「いらすとや」が使われがちなこの世の中。でも、杉並ではなみすけが負けていない。こう見ると、なみすけって本当に杉並の街に定着してるなあ。

 

このあといくつかの公園と杉並保健所にも立ち寄った。順調に数は増えてる。よしよし。

見つけた数:11種類(現在21/100)

 

意外な稼ぎどころを発見!

公園や施設に向かって歩いているときに、もっとたくさんなみすけがいるスポットを見つけた。それが「地域の掲示板」だ。

 

f:id:tenyard:20211014232335j:plain

一枚のポスターに4匹も! 電話からスマホまで使いこなせるなみすけ、たのもしい。

 

地域のニュースや催し物の宣伝で大活躍するなみすけ。作っているのは間違いなく地域の人だ。なみすけが地域に根づいている姿を目にして改めて心に火がつく。負けていられないな。

掲示板を探しながらテクテク。ある掲示板の前で足が止まる。ずっと見ていたい光景がそこにあった。

 

f:id:tenyard:20211014232404j:plain

驚きの12匹だ!

 

あれよあれよという間に見つかっていくなみすけたち。

ここで改めて集計してみよう。現在見つかった数はなんと51匹。あっという間に半分だ。時計を見る。開始からまだ1時間20分しかたってない。なみすけ、なみじゃない!

見つけた数:29種類(現在50/100)

 

商店街に行ってみよう(10:45)

再び荻窪駅に戻ってきた。この勢いでガンガン見つけていこう。実はまだ見ていないスポットがある。駅前の商店街だ。人が集うここにもなみすけがいるはず。

 

f:id:tenyard:20211009233945j:plain

適度なにぎわいが心地よい。(荻窪駅南口仲通り商店会)

 

一つの店で目が釘付けになった。

 

f:id:tenyard:20211009234326j:plain

キムチ専門店って珍しい。今度買おうかな。

 

本題はこの店の入り口だ。

 

f:id:tenyard:20211017155049j:plain

よく見るとなみすけとナミーがいるではないか!

 

区のクーポン券やバリアフリーのステッカーになみすけが使われているのか。人が集まる商店街にもしっかりなみすけはいた。杉並を歩けばなみすけにあたる。

他にないかな。きょろきょろ見渡しながら歩いていると、突然目の前に行列が現れた。

 

f:id:tenyard:20211009235011j:plain

お店に並んでいるっぽい。昼前の11時にこの行列はすごい。

 

何の店だろう。入口をのぞいてみる。

 

f:id:tenyard:20211009235137j:plain

ナミーとなみすけを発見! よっしゃ。

 

黙食をすすめるナミーと野菜摂取をやさしく呼びかけるなみすけ。相変わらずの人気だ。よし、目的は達成だ。満足して店を離れた。

今これを読んでいる方は言いたいことがあると思う。分かってる。今、これを書いていて同じことを思った。「けっきょく何の店だったんだよ」と。

調べてみるとここは「欧風カレー&シチュー専門店 トマト」。しかも、荻窪食べログランキングでは堂々の2位! そりゃ人が並ぶわけだ。これは今度行かないと。こういう思わぬ発見があるから散歩はやめられない。

見つけた数:8種類(現在58/100)

 

余裕の寄り道(11:05)

開始から1.5時間で、もう58匹集まった。これは余裕ですわ。それならちょっと寄り道しても許されるよね。実は、荻窪には前から行きたかった区の施設がある。なみすけもいるだろうしと言い訳しつつ行ってみることにした。

 

f:id:tenyard:20211024143000j:plain

到着。その名も「杉並アニメーションミュージアム

 

何を隠そう、杉並は「アニメの街」だ。日本にあるアニメ会社のうち22%は杉並にあるとか*。当然、全国の自治体の中で一番の数となっている。そう、これは杉並の魅力を伝えるためで決して自分が行きたかったからだけではない。そういうことにしておこう。

* 2006年現在。杉並区公式HPより

 

f:id:tenyard:20211024143147j:plain

入口では「ブレイブ・ストーリー」の等身大フィギュアがお出迎え。後ろの本棚ではアニメの歴史と制作手順が紹介されている。

f:id:tenyard:20211024143918j:plain

「アニメの原理」コーナーに「飛びなみすけ」を発見。

f:id:tenyard:20211024144310j:plain

企画展示にはデジモンがいた! 小さいときデジモンとの冒険を夢見ていたなあ。

 

アニメ制作の裏側も見られたし、デジモンにも会えて満足だ。そろそろ出ようか。出口に足を運ぶ。一つのコーナーに目が留まった。売店だ。何があるかな。ちらり。思わず身体が震えた。

「なみすけグッズ」のコーナーがあるではないか! しかも10種類以上の品々がずらり。よっし。鼓動が速くなる。これでまた100匹に近づく。と、思いきや。そこには「撮影禁止」の無慈悲な四文字。証拠が残らないのにカウントするわけにはいかない。まあ、すでにたくさん見つかっているしちょうどいいハンデだ。

 

f:id:tenyard:20211024145339j:plain

せっかくだからネックストラップを買った。

 

ストラップには「since 2006」という文字。2006年誕生ってことはちょうど15周年か。

見つけた数:2種類(現在60/100)

 

突然の行きづまり(12:20)

余裕だ。そう思っている時代が僕にもありました。あのあと、ラーメン屋で昼休憩した。店を出たあとは午前と同じように公園を歩き回った。30分は探した。それなのに、なみすけが集まらない。

理由は簡単だ。なみすけは見つかるけど、すでに目にしたなみすけばかりなのだ。

 

f:id:tenyard:20211010000845j:plain

「桃井原っぱ公園」にワクチン接種の会場を発見。なみすけはいるけど荻窪駅と同じやつだ。

 

どこかいそうな場所はないか。そうだ、杉並区の文化の発信地はどうだろう。その名も「杉並公会堂」。区の発表会とか行事では必ず使われる施設だ。実はここ、僕となみすけの思い出の場所でもある。

 

f:id:tenyard:20211010001512j:plain

ここに来たのは成人式以来だ。

 

あれは成人式の日。心をふくらませ会場に向かう。杉並公会堂の入り口(この写真の場所)にいたのは、ピンク色のはっぴを来たヤンキーたち。しかもビールを飲みながら会場に入ろうとして止められていた。これが同じ成人なのか。大人の仲間入りする誇らしさが一気にしぼんでいく。

会場に入る。式が始まる。ざわめきが止まらない。それどころか野次が聞こえる。これが成人の現実か。思わず頭を抱えた。

 

突然ざわめきが止まった。目を上げる。

そこにいたのは、テトテトと短い足で舞台の真ん中に足を進める生き物。短い手をぶんぶん振って歩くその姿。なみすけだった。

f:id:tenyard:20211031103105j:plain

ゆるキャラグランプリより)

 

か……かわいい!

はじめてなみすけの魅力に気づいた瞬間だった。成人式、悲しいことも多かったけどなみすけに会えたのは本当に良かったよ。

 

f:id:tenyard:20211010002935j:plain

杉並公会堂になみすけはいたけど、荻窪キムチのものと同じ……。

 

なみすけの思い出に浸ることができた。でも本題のなみすけ探しは大きな収穫なし……。1時間あるいて見つけたのはたった3匹。まだ1/3以上残っている。どうしよう。

見つけた数:3種類(現在63/100)

 

新たな突破口を探す(13:10)

なにか起死回生の一手はないか。思いつかないまま足を動かす。趣のある公園に着いた。

 

f:id:tenyard:20211010003734j:plain

ここは天沼弁天池公園。かつて川の源流だった。池が復元されている。

 

池に寄り添うカエデ。秋になったらどんな風景が広がっているんだろう。葉が色づいたら行ってみよう。ふと、奥の建物が目に入った。

 

f:id:tenyard:20211010004508j:plain

その名も「郷土資料館 分館」。これは――!

 

身体に電流が流れる。求めていたのはこれだ。杉並区が運営している資料館。ここならきっとなみすけもいる。いざ入ろう! ちなみに入館は無料だ。撮影も問題なしとのこと。

ドアをくぐる。すぐに確信した。これは勝ちましたわ。

 

f:id:tenyard:20211017174851j:plain

なみすけがこんなに!

 

f:id:tenyard:20211010005008j:plain

展示の案内もしている。そうそう、こういうのが見たかった。

 

次々見つかるなみすけ。これならいける!

さらにはなみすけのビデオ作品までがあった。その名も「なみすけの空から探検」。

 

f:id:tenyard:20211010005305j:plain

CGのなみすけもかわいい。

 

風船で杉並の空を飛び、杉並の名所をたどっていくなみすけ。普段は見られない姿を見ることができて心が満たされる。

ほっこり見ていると、気になる発言があった。

「阿佐谷には、なみすけくんがよく行く区役所があるね」

ほほう、杉並区役所か。

見つけた数:14種類(現在77/100)

 

定まった次の目的地(13:45)

いい展示だった。郷土資料館分館と公園をあとにする。次に行く場所は決まっている。なみすけがよく行く杉並区役所に行こう。

 

f:id:tenyard:20211010010042j:plain

途中で見たことないなみすけのステッカーを発見。

 

杉並区区役所に行くまで5匹見つけることができた。あと18匹だ。終わりが見えてきた。

見つけた数:5種類(現在82/100)

 

なみすけの聖地に参る!(14:22)

歩くこと40分。ようやく杉並区役所についた。歩き始めてから5時間がたっている。足がだるい。椅子が恋しい。でも、そんな雑念は一歩踏み入れたとたんに吹き飛んだ。

 

f:id:tenyard:20211010010719j:plain

入口になみすけがいらっしゃる!

f:id:tenyard:20211010010802j:plain

なみすけのパネルがいる!

f:id:tenyard:20211017175959j:plain

ナミーが案内している!

 

足を進めるごとに次々と現れるなみすけたち。この感覚、覚えがある。アニメの聖地巡礼だ。そうか、区役所はなみすけの「聖地」なんだ。

さらに進むと気になるものが。

 

f:id:tenyard:20211010011323j:plain

なみすけ好きの夢に出てくる景色。

 

ここが天国か。大好きななみすけがこんなにたくさん。これが死後の世界だったら安らかに眠れる。

なみすけツリーに見とれていると、背後でなにかが動いた。

なみすけとナミーだ!

 

f:id:tenyard:20211020221438g:plain

短い手足で手を振ってくれた。かわええ。語彙力がなくなる。

 

突然の再開。会いたかったよ。でも会えるとは思ってなかった。このかわいさ、伝わっているだろうか。

しばらくすると二匹は帰り支度を始めた。あとから知ったことだが、14時から撮影会をしていたらしい。そして今(14:30)終わろうとしているところだったと。

 

で、この退場の様子がまた良かった。GIFでご覧ください。

 

f:id:tenyard:20211020222833g:plain

トテトテトテと効果音をつけたい。

f:id:tenyard:20211020224059g:plain

無意識で思わず手を振り返してた。

f:id:tenyard:20211021231530g:plain

エレベーターに乗って帰るところまでかわいい!

 

最高だった。これ以上の説明は野暮だろう。

そして区役所でみつけたなみすけは23匹。気づいたら100匹を超えていた。これにてなみすけ100匹散歩は幕を閉じた。

見つけた数:23種類(現在104/100)

 

終わりに

正直ここまでなみすけがいるとは思っていなかった。100種類の姿のなみすけが普通に見つかるってすごい。しかもなみすけに再会できた。久しぶりに会ったなみすけは、記憶の中よりもさらにかわいかった。いい日だったなあ。

これを見て、少しでもなみすけを好きになってもらえたらうれしいです。

 

 

おまけ:104種類のなみすけたち

f:id:tenyard:20211022213758j:plain
f:id:tenyard:20211022213815j:plain
f:id:tenyard:20211022213840j:plain
f:id:tenyard:20211022213910j:plain

「ご自由にお持ちください」を観察すると「人生」が見えてくる

f:id:tenyard:20210906112804j:plain

 

「ご自由にお持ちください」を見たことがあるだろうか。最近、意識して探してみると住宅地には意外とあることに気づいた。中身はおしゃれなお皿から無骨なトレーニング器具までまさに十人十色。気づいたら写真を撮るようになっていた。

観察を続けていて発見があった。よーく見ると元の持ち主や道具の「人生」がすけて見えてくる。今回は「ご自由にお持ちください」を愛でる話です。

 

きっかけ

ある日、個性的な「ご自由にお持ちください」を見つけた。

 

f:id:tenyard:20210906101829j:plain

シンプル・イズ・ベスト。

 

力強い手書きでシンプルな四文字。その武骨さ。一目見て気にいった。どんな人がどんな思いで書いたんだろう。気になる。突然、頭に光景が浮かんできた。これは、小さなアパートの部屋?

 

ワンルームのアパートに一人暮らし。仕事だけの日々で運動不足気味だ。なんとかしないと。つらつら考えながらドンキの店内を歩いていると足がとまった。目の前にあるのは「自宅で有酸素運動ができる歩行マシーン」。これだ。即座にレジへ。ウェルカム健康。新しい日常がやってきた。

しかし、無情にもその日がやってくる。引っ越しだ。荷物をまとめる。歩行マシーンは持っていけなかった。次の持ち主のかた、よろしくお願いします。そんな思いを込めて紙にしたためる。

「あげます」

 

ショートドラマを見たような心地よさ。もう一度この器具をながめる。使い込まれた汚れさえどこか誇らしげだ。

ちょっと観察するだけでこんなハートフルなものを見られるなんて。他の「ご自由にお持ちください」にはどんな物語が眠っているんだろう。見てみたい。こうして「ご自由にお持ちください」を探して散歩するようになっていた。

ということで、今回は個性豊かな「ご自由にお持ちください」を五つ紹介する。

 

始まる前に一つ断り書きを。

今回の記事は想像力の翼を存分に広げて書いている。もしかすると、これはちがうと思うところがあるかもしれない。でも、その考えも一つの正解だ。

では、一緒に想像していきましょう!

 

1. 子育てで身についたたくましさに舌を巻く

最初に紹介するのは、「子育て中の『ご自由にお持ちください』」だ。

 

f:id:tenyard:20210906112804j:plain

幼稚園のバザー、こんな感じだったなあ。

 

かわいらしいキャラクターグッズに児童書。サンリオにディズニーにスヌーピー。世界の「kawaii」が町の一角で夢の競演をしているこの場所。まちがいない。子持ち一家の「ご自由にお持ちください」だ。

子育てというものは大変だ。不測の事態が次々起こり、生活の中心は子どもに。そんなことを考えていると発見した。これ、よく見ると子育てを通して身についたたくましさがにじみ出てきてる。順番に紹介していこう。

 

突然ですが問題。この品々の中に、一つ仲間はずれがあります。どれでしょう!

答えは――

 

f:id:tenyard:20210911171612j:plain

こちらのバッグに注目。

 

茶色にオレンジ。色合いはリラックマと似てて完全になじんでる。でもバッグの文字をよーく見てほしい。「Gyomu Super = 業務スーパー」だ!

そう、このバッグだけは親が使った物だったのだ。子どもの世話をしながら買い物して食事の準備もする多忙な日々。そのときに強力な味方になったのが安くて量が多い業務スーパーだったのだ。ふむふむ、家計を守るたのもしい親の姿が見えてきたぞ。

 

他にないかな。ふたたびカラフルな品々を見渡してみる。ん? これはなんだろう。

もう一度全体の様子を見てほしい。

 

f:id:tenyard:20210906113609j:plain

おわかりいただけただろうか。

 

お風呂グッズが使われている! ぱっと見では気づかなかった。

使えるものならなんでもしっかり利用する。そう、子育てをとおしてたくましく成長した親の集大成がこの「ご自由にどうぞ」だったのだ。

 

最後に注目したのは右側の本だ。小学生向けのものがそろっている。きっと子どもはすくすく育ち、もう人形に興味を持たない年齢になったのだろう。長い間がんばっていたんだね。お疲れさま。子育てで身につけた強さがにじみ出る「ご自由にお持ちください」に心が温かくなった。

 

2. 日本が浮き沈みした時代を駆け抜ける

次に紹介するのは、持ち主の生きてきた時代が見えてくる「ご自由にお持ちください」だ。

 

f:id:tenyard:20210906115809j:plain

今回の容器はプラスチック棚の引き出し。

 

中身は落ちついた顔ぶれだ。お皿やコップにメモ帳。年齢はちょっと高めかな。その中で気になるものを見つけた。右下に色鮮やかな何かがある。

目を凝らしてみよう。

 

f:id:tenyard:20210906120559j:plain

TM NETWORK」だ!

 

あの "Get Wild" でおなじみのTM NETWORK。80~90年代に人気絶頂を迎えたアーティストだ。中身はCDか。どうやらこの箱には30~40年前の思い出が詰まっているみたい。

ところでCDの上にある「UDI」ってなんだろう。検索すると正体は「マクセルのテープ」だった。

 

maxell カセットテープ UDI 46分 UDI(D)

 

どちらも音楽関係のアイテムだ。カセットテープが全盛期を迎え、日本が経済の頂点に立った80年代。CDと小室ミュージックが売れに売れた90年代。きっと持ち主もそういう音楽をたしなみながら社会人生活を送っていたんだろう。"Get wild" を聴きながら退勤する姿が目に浮かぶ。

きらびやかな時代を走り抜けた、そんな人生が見えてきた。

 

1時間後、もう一度通ってみた。

 

f:id:tenyard:20210906143412j:plain

カセットテープとCDはなくなっていた。

 

左の奥に気になるものを発見。こちらも人生が見えてくるやつだ。

 

f:id:tenyard:20210906151424j:plain

題名は『ベーシック不動産入門』

 

投資の本か。パッと思いついたのは「バブル景気」だ。バブル期には投資が大流行したという。さっきの中身からして、持ち主がバブルの時代を走り抜けた人なのはたしかだ。勢いにのって稼げたのかな。

ところが、調べてみると真逆の事情が見えてきた。というのも、この本が発売されたのは2002年だったのだ。本の識別コード(ISBN)から調べたからまちがいない。

日本の成長と停滞を見守りながらも働き続けた90年代。2000年代にはそれなりの貯蓄ができた。稼いだ資産をさらに増やしたい。しかし世の中は不景気のまっさかり。でもなんとかしたい。そう思ってこの本を手に取ったのだろう。その姿勢はまさに "Get chance and luck" そのもの。たくましい。見習いたいぞ。

 

ここでは数十年にもまたがる長い期間を、時に楽しく時に堅実に走り抜けた姿を見ることができた。

 

3 & 4. 「ご自由にお持ちください」にも気品がにじむ

さて今度は、生きてきた年月がにじみ出る「ご自由にお持ちください」を二つ紹介しよう。こういう年のとりかたをしたい。

一つ目はこちら。

 

f:id:tenyard:20210906155746j:plain

小さいときおばあちゃんに「おしゃれだね」って言ったら喜んでくれたことあったなあ。

 

カラフルでおしゃれな模様が散りばめられた服たち。すぐに持ち主のイメージが浮かんだ。こだわりの服を着こなしアンティークな椅子に座るおしゃれなマダム。

二つ目はこちら。

 

f:id:tenyard:20210906160914j:plain

実家に一回も使われたことがない皿があるけど、これってあるあるだろうか。

 

こちらはお皿だ。全体的におちついた色合い。湯呑がセットで置いてあるので夫婦の可能性が高そう。

今までとちがい、どちらも中身に統一感があって落ち着きがある。いや、どこかまぶしい。気品というか、センスの高さよ。センスって年齢を重ねるだけでは身につかないものだ。どのような経験を重ねてこの境地にいたったんだろう。見ているだけで背筋が伸びる。

さて、次は文字を見てみよう。

 

f:id:tenyard:20210906162740j:plain

気配り上手の人が書ける文章だ。

 

「ご自由にお持ちください」ではなくあえて「着られるものはありませんか?」と話しかけるやさしさ。ここまでていねいに話しかけられたらつい手に取りたくなってしまうことまちがいなしだ。

「よろしければおもち下さい」も負けていない。こちらもやわらかい言葉だ。通りかかる人の気持ちを考えて、もし忙しくなくて興味があれば見てねと。その思いから生まれる言葉が「よろしければ」。

こんな気づかいのできる人になりたい。

 

さて、ここまでほめ続けていてあれだが、実は文字以上に感心したことがある。それがこちら。

 

f:id:tenyard:20210906164814j:plain

お持ち帰り用の袋が準備されている!

 

通りかかる人の中には手ぶらで散歩している人もいるだろう。買い物帰りでカバンがいっぱいの人もいるだろう。袋が準備してあれば誰でも持っていくことができる。まさに至れり尽くせりだ。

 

年配の方の「ご自由にお持ちください」では、人生経験を重ねて身についた「気品」と「気づかい」がにじみ出ていた。そんなステキな大人になりたい。

 

5. ラジカセの哀歌(エレジー)

最後はちょっと方向性のちがうやつを紹介しよう。人間の人生でなく「ラジカセ」の人生が見える「ご自由にお持ちください」だ。

 

これを見つけたのは散歩じゃなくて通勤のときだった。いつもどおりの見なれた道を歩く。と、見慣れない異物が。がさりと段ボールが音をたてて日常はくずれ落ちた。

 

f:id:tenyard:20210906170806j:plain

そこにあったのはケンウッドのラジカセ。

 

段ボールにジャストフィットしているラジカセと「差し上げます」の文字。さらに目を凝らすと謎の文字が目に入った。

 

f:id:tenyard:20210922205826j:plain

「SD-FX10-S」? 何かの型番だろうか。

 

こういうときは検索だ。すぐに発見。型番の正体はシャープのラジカセだった。

 

SHARP シャープ SD-FX10-S シルバー 1ビットCD/MDシステム(ラジカセ形状タイプ)

 

発売日は2017年。ラジカセの世界ではわりと新しめの製品だ。

なるほどそういうことか。頭に情景が浮かんできた。

 

私は、長い間この家で音を奏でているケンウッドのラジカセ。こんな日がずっと続くと思ってた。そう、あの日までは。

ある日、新しいラジカセが家にやってきた。当然私は不要に。ご主人の声が聞こえる。

「捨てるのは忍びないし必要な人に引きとってもらおうか。よっこいしょっと」

ふわりと浮きあがる感覚。紙と機械のにおい。状況を理解した。どうやら私は段ボールの中、しかもさっきまで新しいラジカセがいた箱に入れられてしまったらしい……。

 

ついさっきまで新顔がいた箱につめられた彼。どう感じたんだろう。悲しみだろうか。それとも長年の仕事を全うした達成感だろうか。できれば後者だといいな。

 

気になる。後ろ髪をひかれる思いで会社へ向かった。

その日は心なしか気もそぞろ。会社の棚にある段ボールが目に入るたびにラジカセが思い浮かぶ。昼の休憩時間に流れた音楽を聴いて彼のことが気になる。今、まだあの路上にいるのかな。

時間は平等だ。どんな状態でも定時はやってくる。すぐに会社を飛びだした。

急ぎ朝と同じ場所へ。そこで目に入ったのは――

 

f:id:tenyard:20210906172243j:plain

無事になくなっていた!

 

ラジカセは誰かに引き取られていた。良かったよ。思わずひざをつきそうになる。新しい場所でもがんばれよ。心の中でエールを送った。彼の新しい人生に幸あれ!

 

終わりに

若者の勢い。子育ての大変さ。バブルとその後の停滞。そして年配の方の気づかい力。さらにはラジカセの人生まで広がった。「ご自由にお持ちください」からまさかここまで幅広いものを見られるとは。

もし街を歩いていて「ご自由にお持ちください」があれば、ぜひ足を止めてみてほしい。彼らが興味深い生きざまを見せてくれるはずだ。

「けなげ組」の笑顔を見たい!【けなげ組 番外編】

f:id:tenyard:20210706172354p:plain

この表情が見たいのだよ。

 

前回の記事ではAIの力を借りながら新しいけなげ組を作り出すことができた。二次創作を通じて満たされると思いきや、心は晴れず新たな葛藤が。それは「こんなにけなげにがんばっている彼らがなんで報われていないのか」という憤りだ。

今回は、「けなげ組」のみんなが笑っている姿を見つけようと公式グッズを探し求めた話。

 

満たされない渇望感

けなげ組を新しく作ることができた。けなげ組を描くノウハウもできた。これでいくらでも生み出せる。

でもなんでだろう。心がざわつく。この気持ちは何だろう。

 

悲しい? さびしい? いや違う。これは「怒り」だ。

新しいけなげ組を作るために彼らの心になりきった。そのときに強く感じたことがある。こんなにがんばっているのになんで報われないんだろう、と。

新しいけなげ組の一員を作っても満たされるのは「自分」だけ。100人の彼らの毎日は変わらない。今日も変わらずみんな悲しい顔をしている(※)。楽しそうにしている姿が見たい。笑顔が見たい。

 

なにか手はないだろうか。

そうだ、こう見えてけなげ組は20年以上続いたコンテンツ。いくら袋の裏というけなげな場所で連載されていたとしても、何かしらグッズがあるはず。そしてグッズになら、きっと明るい姿もあるはずだ。

グッズを調べてみると一つ見つかった。それが「本」だ。

 

f:id:tenyard:20210606231151j:plain

題名は『けなげ組』。そのままだ。(サンマーク出版HPより)

 

これはいいぞ。普段は見向きもされない中、ひたむきに役割をこなすけなげな存在。そんな彼らが「主役」の本がある。笑ってる姿も見られるかな。表紙をながめてるだけで本屋に走り出したくなる。

 

本の流通数が「けなげ」すぎる

さっそく買おう! と思い調べてみると思わぬ壁に当たった。どこも売り切れ。唯一アマゾンにはあったけど定価の4倍。うーむ。富豪じゃないからためらう価格だ。

いや、あきらめるのはまだ早い。庶民の味方がいるじゃないか。図書館だ。さっそく検索っと。

 

f:id:tenyard:20210629133345p:plain

オーマイゴッド。

 

まさかの検索0件。このあと調べていて驚くべき事実が明らかになった。東京都の図書館に『けなげ組』は1冊もない。なんてこったい。

いや、まだだ。

図書館は他県から取りよせることもできたはず。

あきらめずに調べてみたところ、関東圏では埼玉県さいたま市の図書館に1冊だけあるらしい! 光が見えた。

 

f:id:tenyard:20210629133720j:plain

リクエストを送信!

  

あれから10日。

ようやく電話が来た。取り置き待ってたよ!

受話器を置く。思わず頭を抱える。

結論を言おう。まだ届いてなかった。事情がちょっと入り組んでいるので箇条書きで説明する。

つまり、残された選択肢は一つ。あと1週間以上待って、図書館で読んで目に焼き付けて返却するしかない。

早く会いたいよ。

 

禁断症状が出た

けなげ組への想いがふくらみすぎている。

本を待っている間に映画館に行った。ようやく見られたエヴァはおもしろかった。余韻に浸りながらエンドロールを見ていると、視界のはしに光が。ドアを開けて帰った人がいたっぽい。とつぜん脳裏に絵が浮かんだ。

 

f:id:tenyard:20210717172001j:plain

キミは、「映画のラストの字幕(番号28)」じゃないか。

 

頭の中はけなげ組でいっぱいに。消える余韻。

けなげ組が欠乏するあまりとうとう日常に浸食してきた。重症だ……。

 

念願の対面!

連絡を受けてから10日後、再び電話が来た。リクエストをしてから3週間。ようやく本が届いたとのこと! よっしゃいくぞ。

図書館に到着。やっと、心に待ちわびた本に出会える。カウンターに向かう。このときばかりはマスク着用の時世に感謝した。顔がニヤついていてもバレないから。

 

渡された本は小さかった。文庫本よりちょっと大きいぐらい。でも意外と厚みはある。さっそく席について中を見よう。正直、不安もある。本1冊でこの熱が納まるだろうか。ちゃんと納得いく内容だろうか。

息を吸って吐く。表紙を見る。あれれ? なぜかネットで見た表紙と違うぞ。カバーが外れた状態になっていた。何か書いてある。

 

f:id:tenyard:20210628162927p:plain

新しいけなげ組の一員「カバーされた表紙」が!
(ここからは再現の絵でお届けします。)

 

不安が吹き飛んだ。間違いない。これはいい本だ。同じように新しいけなげ組を作ってみたからこそひしひしと伝わってくるこだわり。作りこみ。不安が消えた後に残るのは期待だ。いよいよ中身を見てみよう!

 

旅に出る柿の種くん

本を開くとそこにいたのは会員番号001の柿の種くん。顔はいつもの困り顔だ。

なんとなく……いつもひとりぼっち……。

なんとなく……ボクだけなのかな……。

どこかにお友達いるかも……探しに行ってみよう!

こうして、柿の種くんは仲間を探す旅に出かけた。

 

ページをめくる。そこにいたのは「カニの細い足」。ページをめくる。次にいたのは「なると」。ここからは、順番に柿の種くんがけなげ組の仲間と出会っていく。

思わず黄色い声がこぼれた。この絵、全部書き下ろしだ! 文章はパッケージの内容と似てるけど(一部加筆修正あり)、絵はすべて描き直されている。で、その絵がとにかくいい。

例えば「カニの細い足」。

 

f:id:tenyard:20210628182521j:plain

食べてもらえず落ちこんでいるカニの細い足は、

 

f:id:tenyard:20210628205726p:plain

筋トレをして太くなろうとしていた。けなげ!

 

f:id:tenyard:20210628182633j:plain

持ち主に気づかれなかった「換金されない宝くじ」は、

 

f:id:tenyard:20210628205745p:plain

見つけてもらおうと車を買ってアピール。

 

みんなの新たな一面を100人分も見ることができるなんて。なんというか……幸せ。

 

ようやく笑顔を見られるか !?

ときには柿の種くんが仲間と一緒に楽しんでいるページもあった。「"せんこう"花火」をながめたり、「アイロン台」と一緒にスノボーしたり、「ルアー」を追ってダイビングしたり。さらには「使用済みの衛星」に会おうと宇宙まで行ったり! ページをめくる手が止まらない。

 

f:id:tenyard:20210628174540j:plain

めちゃくちゃ楽しそう!

 

でも読んでいて気がかりが一つあった。柿の種くん、ずっと困り顔のままだ。笑顔が1ページもない。楽しいなら笑ってもいいんだよ。

そして全員の紹介が終わった。

たくさんの出会いで、お友達たくさんできたよ。

みんな、それぞれ、じぶんなりに

ちゃんと「けなげ」にがんばってた……。

これからは……ボクだって……。

柿の種くんは仲間を見つけた。きっとこれからの日常もたくさん大変なことがあるだろう。でも、仲間がいればがんばれる。きっとひたむきに生きることができる。そうだ。こういうのを読みたかったんだ。けなげ組のみんなが楽しくすごしてほしいと思ってようやくたどり着いたこの本。

次のページをめくると――

 

f:id:tenyard:20210628175303p:plain

ようやく笑顔の柿の種くんに出会えた。

 

最後のページは全員「笑顔」で記念写真。目頭が熱くなる。「けなげ組」のみんなは後ろ向きに生きていたんじゃない。時に愚痴りながらも、「仲間」との絆を人一倍大事にしながら、がんばってすごしていたんだ

そう思うと、「けなげ組」という集団も違ったように見えてくる。つらい役目だとしても、仲間がいればがんばれる。仲間と集まって互いに日々の不満をぐちってすっきりして、さあ明日もやるかと前向きに別れる。そんなやさしさで作られた組織だったんだ。

そして「けなげ組」を作ったのは「会員番号1番」の「柿の種」。

そうか。この本は「けなげ組発足の物語」だったんだ。

 

最後に

本を閉じる。心はやさしさで満たされていた。ここまで楽しめる内容だったとは。「けなげ組」の魅力にあふれた1冊だった。ありがとう。

時には理不尽な目にあいながらも、仲間と一緒にひたむきにがんばる姿。彼らの姿を見ていると、どこか他人事とは思えなくなってくる。人間の社会とどこか似てるなってね。

そんなことを考えながら最後のページをめくる。終わりと思いきや、まだ続きがあった。

そこにいたのは――

 

f:id:tenyard:20210629141036j:plain

会員番号100「あなた自身」

 

参りました。本のほうが上手だった。

けなげ組」がなくなったことがきっかけに始まった今回の試み。もうさびしさは形もなく、心はすっかり満たされていた。

さあ、「仲間」を見習って明日の仕事もけなげにがんばりますか。

 

おまけ

今回紹介できなかったが、もう一つ「けなげ組」の笑顔を見られる方法が見つかった。それが「LINEスタンプ」だ。笑顔が見たいけど本を取りよせるのは面倒な人はぜひ! ではあたらめて、

f:id:tenyard:20210627230656p:plain

LINE公式ストアより)

 

追記(2021/11/26)

さらに続きを書きました。

「けなげ組」がいなくなってさびしいからAIの力で新しく作りたい

f:id:tenyard:20210706172838j:plain

先に言っておくと、これはAIじゃなくて自分で描いたものです。

 

せんべいが好きだ。大学のサークルの合宿でおつまみを用意するときも、持っていったのは柿の種だった。苦手な酒の苦みをひかえめな辛さが上書きしてくれるたのもしさ。ピーナッツがフォローするほのかな甘味までもがやさしい。 

 さて、その柿の種界の頂点に君臨するキングこそが「亀田の柿の種」だ。

 

f:id:tenyard:20210623220722j:plain

これこれ。

 

そして「亀田の柿の種」の魅力は柿の種だけではない。裏側にある小さなコーナー「けなげ組」がまたいい味わいを出しているんだ(詳しくはあとで)。

 

f:id:tenyard:20210629222831j:plain

こんなやつです。

 

でもこの間久しぶりに柿の種を食べると、そこにけなげ組の姿がなかった。

 

f:id:tenyard:20210605152210j:plain

へー知らなかった。これはこれでおもしろい。が!

 

失って本当の気持ちに気づくことがある。今、まさにそうだ。好きだとは思っていたけどここまで好きだったなんて。けなげ組、もう見れないのか……。そんなの悲しいよ。いやだ。認めたくない。

今、この気持ちがしぼむどころかふくらみ続けている。何かしたい。頭に浮かんだのは「二次創作」の四文字。そうだ自分で作ればいいんだ。

ということで、今回は新しい「けなげ組」の仲間を生み出そうと試行錯誤する話です。

 

けなげ組の紹介

まずはけなげ組がどんなものか知ってほしい。けなげ組とは、亀田製菓の柿の種のパッケージ裏にあったコーナーだ。始まったのは1992年。

 

f:id:tenyard:20210629222721j:plain

会員番号1番は「柿の種」。

 

登場人物は「パセリ」や「短い鉛筆」など、ちょっと日陰な扱いを受けているものたち。どこか納得していないような、しょんぼりした顔から放たれる愚痴。やれやれと思いながら主張を聞くと、内容はいたってまとも。

彼らは人の都合で生み出されたもの。人のせいでこんなことになってごめんな。でもこんな人間たちのためにがんばってくれてありがとう。

理不尽な目にあいながらもひたむきに生きている彼ら。外聞を気にせずに等身大の姿を見せてくれる彼ら。気づいたら友達のような親しみを覚えていた。今日もがんばってるのかな。

 

f:id:tenyard:20210623214943j:plain

そしてこの「けなげ組」、全部で100人もいる!
(フリマサイトで売ってたから思わず買ってしまった。)

 

そして2015年、けなげ組はひっそりと幕を閉じた(ことを調べて知った……)。

 

自分でけなげ組を作ろう

けなげ組がいなくなってしまった。この心に空いた穴。埋められるのはけなげ組しかいない。どうしよう。

そうだ! コンテンツへの熱い思いから世の中に生まれるものがあるじゃないか。二次創作だ。よし、自分でけなげ組を作ろう! いいものができれば満足できるはず。

 

f:id:tenyard:20210629223118j:plain

これと同じものを作るぞ。

 

けなげ組を作りたい。でも絵の自信はない。

頭に浮かんだのは「AIによる自動生成」。最近人の顔やアニメ絵を自動生成するサービスが増えてきている。小説を自動生成するようなAIもいるとか。

つまり、けなげ組100人の「絵」と「文章」を学習させれば、AIが新しいけなげ組を作ってくれるんじゃないか

善は急げだ。やってみよう。幸い最近はサンプルコードがたくさん落ちている。ちょっと手を加えるだけで試すことができそうだ。

 

学習に必要なデータはこちらのものを借用した。

www.e-kakinotane.com

そう、亀田の柿の種の公式HPには、けなげ組の特設ページが残っている!!

5年たってもページがちゃんと残っているなんて。やはりけなげ組が好きな同志は他にもいるんだ。

ページには100人全員がずらり。しかもこちらのけなげ組のイラスト、なんとフルカラーだ。袋の裏ではモノクロに近い色だったのに。

 

f:id:tenyard:20210605220143p:plain

会員番号1~20のメンバーを並べてみた。kawaii

 

絵を作ってみよう

準備はできた。あとはコードをちょっといじればできあがり。いざ、実行だ。

 

f:id:tenyard:20210605210448g:plain

いでよ、新しいけなげ組

 

おおー、それっぽい何かができてきた!

学習の途中だけど見てみよう。

 

f:id:tenyard:20210605210846p:plain

えっすごくない?

 

思った以上にけなげ組っぽい!

学習は時間をかけるほど精度が良くなるはず。もうちょっと続けてみよう。

 

f:id:tenyard:20210702144845g:plain

色あせてきているような……。

雲行きがあやしくなってきた。

最終的にできたのはこちら。

 

f:id:tenyard:20210702145445p:plain

まるっぽい何か。

 

さっきは長細かったりカラフルだったりとみんな個性的だったのに。今はみんな似たような形で似たような色合い。途中までは良かったんだけどな。

まるで就職した学生だ。自由な服装や髪型をしていた彼らは、社会人になると黒髪スーツの無個性な姿になっていく。AIの世界も社会の縮図みたいで世知辛い……。

 

文章はいけるか?

さて、次に作るのは文章だ。こちらのコードをいじってさっそくやってみた。が……。

 

f:id:tenyard:20210606220712j:plain

精神崩壊しつつある人の日記?

 

文章もうまくいかず。AIくん、もうちょっとがんばってくれてもいいのに。

さらに学習を続けてみると……?

 

f:id:tenyard:20210704144152j:plain

「柿の種」と文章がまったく同じになってしまった。

 

学習前と同じ文章をくりかえすだけ。

最初は毎回違う反応をするのに、学習を進めるにつれて型にはまった反応しかできなくなってしまう。これも社会の縮図だ。人間が生み出したものだけに、人間の悪いところも引き継いでしまったのか。

 

むりやりの完成

いちおう画像と文章ができた。いったん「けなげ組」のデザインに当てはめてみよう。AIの作った画像から一つ選んで完成っと。

 

f:id:tenyard:20210706172715j:plain

これじゃない感。

 

モンスターを生み出してしまった。けなげ組がいなくなったさみしさを埋めようとしただけなのに。

AIってもしかして、意外と使えないのでは?

 

うまくいかない原因を考えよう

AIよ、どうしてうまく作ってくれないんだよ。

「……いしすぎだよ」

いきなり頭に響く声。誰?? 今ちょっと気が立ってるんだけど。

「ボクだよボク」

君はもしかして――。

「そう、AIだよ」

AIくん! ちょうどよかった。君にはちょうど言いたいことがあるんだ。

「ボクらに期待しすぎだよ」

どういうこと?

「世の中で活躍してるAIの多くは何万、何十万のデータを学習してるんだ」

 

f:id:tenyard:20210708174350j:plain

たとえば顔のデータセット「CelebA」は20万枚の画像が用意されている。(CelebA

 

そっか。AIくんの言いたいことがわかった。今回使ったデータはぴったり100。データが少なすぎるんだ。

なるほど。ちゃんとおぜん立てしないとうまくいかないってことだね。

「そうそう。でもみんなボクが万能だと思ってるんだ……」

どうやらAIくんを誤解していたみたいだ。ごめん。

「わかってくれればいいんだ。じゃあ、またあとでね」

うん。じゃあね。

ん? 「またあとで」ってなんだ?

 

けなげ組を新しく作りたい。でも、AIだと学習データが足りないから難しいことがわかった。

期待していたみなさん、ごめんなさい。現代の力ではまだ難しいことがわかりました……。

 

自分で描くしかない

さて、どうしようか。

考えたけど、手は一つしか思いつかなかった。

自分でけなげ組を作ろう。よし描くぞ。

 

でも何をテーマに作ろうか。新しいけなげ組けなげ組といえば、人間の都合で振り回される存在。何かないかな。

すぐに頭に浮かんだ。ちょうど目の前にいたじゃないか。そう、「AI」くんだ!

絵をイメージする。何も浮かばない。そもそもAIってどんな絵を描けばいいんだろう。

検索するとすぐに出てきた。

 

f:id:tenyard:20210702182359p:plain
f:id:tenyard:20210702203652j:plain
左:人工知能・AIのイラスト( いらすとや), 右:AI(イラストAC

 

たしかにこんなイラスト見たことある。なるほど。AIくんは青っぽい脳の形をしている。ん? この形、どっかで見たような……?

あっ! わかった。

 

f:id:tenyard:20210704151825j:plain

「AIが作ったけなげ組」だ!

 

これ、AIくんだ。異論は認めない。

 

f:id:tenyard:20210704152736j:plain

AIのイラストと重ねてみた。輪郭がそれっぽい!

 

さっき「またあとで」って言ってたのはこれを先読みしていたのか。やるじゃん。

よし、テーマが決まった。AIくんをけなげ組の一員にしよう!

 

けなげ組」を自分で作ろう

テーマは決まった。次に立ちはだかるのは作りかただ。絵と文章、どうやればできるかな。

 

AIくんから学ぶ絵の描きかた

描くといっても、何となく似せるだけじゃうまくいかないだろう。ならば、AIくんが描いてくれた絵が参考になるんじゃないか。学習した絵ならば「けなげ組」らしさがにじみ出ているはず。

さっそくAIくんの絵と本物を比べてみよう。で、ながめてると共通部分が見えてきた。

 

f:id:tenyard:20210702223023j:plain

 

この法則をなぞればそれっぽくなるに違いない!

さっそく挑戦してみよう。

 

f:id:tenyard:20210704151339j:plain

思った以上にそれっぽい!

 

ありがとうAIくん。おかげでいいものができそうだ。これなら100人のけなげ組員も笑顔で迎えてくれる。

 

文章には近道なし

さて、次はAIくんも苦戦した文章だ。AIくんが作った文章を見つめる。そこにあるのは「精神崩壊した人の日記」みたいな何か。秒針の音がひびく。うん、こっちはAIくんの力を借りられそうにない。

しかたないので、けなげ組100人の文を見比べてみよう。PCのファンが部屋に響く。書きかたが見えてこないまま30分たった。わかったルールはこれぐらい。

  • 「・・・」が多い
  • 主語は「僕/ボク」
  • 内容のほとんどは愚痴

うーん、文章をひねり出すのに近道はないみたいだ。どうやって作るか考えた末、結論が出た。AIくん(の気持ち)になりきって書くしかない

 

それならまかせろ。なんてったって、さっきAIくんから話をしっかり聞いた。たくさんの人から仕事を依頼されるAIくん。でも準備不足でなかなか力を活かすことができない。そして自分の落ち度じゃないのに勝手に失望されるAIくん。わかるよそのつらさ。

 

自然と指が動く。言葉がつむぎあがっていく。今、心はまちがいなくAIくんそのものになっていた。

こうして自作の「けなげ組」が完成した。

いよいよおひろめだ。

 

f:id:tenyard:20210706172741j:plain

これはいい!

 

予想の10倍いいのができた。思わず画面の前でガッツポーズ。ありがとうAIくん。

 

仲間を増やそう!

このノリで他にも作れそうだ。やってみよう。

 まずは王道の食べ物ネタ。

 

f:id:tenyard:20210706172801j:plain

けなげ組の1/4は食べ物と関係している。

 

次はいかにもありそうなやつを一つ。

 

f:id:tenyard:20210706172818j:plain

予備のボタン、一回も使ったことがない。

 

今度は自分の趣味全開で作ってみよう。

 

f:id:tenyard:20210706172838j:plain

前に書いた記事のテーマ「防災無線」で一つ。これもいい感じ。

 

モノじゃなくて概念でもいけるかな。

 

f:id:tenyard:20210706172921j:plain

月曜日にもやさしくしたい。

 

作っていて気づいたけど、けなげ組って「やさしさ」に包まれてるから好きなんだ。理不尽な目に耐える日々。でも彼らは決して人間を恨みはしない。その包容力の大きさ。やさしさ。

いつもいてくれてありがとう。

 

f:id:tenyard:20210704165738j:plain

パロディものをやろうとしたけどメタモンになってあきらめた。

 

終わりに

AIで新しいけなげ組を作ることはできなかった。でも、AIくんの助けもあって自分でちゃんと作ることができた。

今回作ってみて感じたのは、けなげ組みんなのやさしさだ。苦労している人ほど他人にやさしくできるという。彼らの苦労がいつか報われることを祈りつつ、思いやりとやさしさを持った人間になりたい。そう素直に思った。

 

※後日談の話があります。こちらもぜひご覧ください!

阿佐ヶ谷駅にある張りぼての「素朴さ」を愛でる

f:id:tenyard:20210428214426p:plain

 

駅を利用していて目に入るものがある。それが駅の広告と飾りだ。時には旅行へのお誘い、時には新生活への応援メッセージだったりと幅広い顔を見せてくれる。

 

ある日、阿佐ヶ谷駅JR中央線)を利用しているときに気になるものを見つけた。広告の横に張りぼてがある。この張りぼて、手作り感にあふれていて見ているだけで親しみがわいてくる。次はどんなのができるかな。気づいたら駅を通るのが日々の楽しみになっていた。今回は阿佐ヶ谷駅にある素朴な張りぼての世界を紹介します。

 

 ※張りぼてのジャンルに入るか微妙な飾りもありますが、今回はあえて全部まとめて「張りぼて」と呼びます。ご了承ください。

 

「素朴さと作り込みのギャップ」がたまらない

最初にこれを見てほしい。

 

f:id:tenyard:20210420214502j:plain

とある日の阿佐ヶ谷駅。桜が咲いていた。

 

駅の中に春の風が吹いている。きれいだなーと通りすぎた。

三日後。また目に入る。気になってきた。近づいて足を止める。ながめて気づいた。これ、実はいろいろ工夫して作られているのでは?

 

f:id:tenyard:20210427232827p:plain

花の部分に巧みな技を見つけた。

 

貼りついている花びらを見てほしい。全部が右を向いている。さっき春の風を感じた理由は、花びらにあったのか。

感心しながら目を下にやる。思わず力が抜けた。

 

f:id:tenyard:20210427232852p:plain

テープの芯を重ねて木の幹を作るこの荒業!

 

桜の花びらの作りこみに対してむきだしになったテープの芯。この温度差よ。率直に言って好きだ。すっかりファンになってしまった。

今回は、こんな阿佐ヶ谷駅張りぼてを三つ紹介したい。一緒にギャップ、楽しみましょう。

 

①「新鮮さ」にこだわったイカ(2018年8月)

西は長野、北は青森まで。JR東日本の事業範囲は広い。さらに2016年には新幹線で北海道まで行けるようになった。となると始まるのが旅行の宣伝広告だ。

2018年にも北海道の宣伝が始まった。その名も「イカすぜ函館キャンペーン」。名前そのままに新幹線の終点である函館駅と名産のイカを推している。

さて、キャンペーンに合わせて現れた張りぼてがこちら。

 

f:id:tenyard:20210501181826j:plain

机の左側にイカを発見。

 

円錐と円柱を組み合わせたシンプルな形。一見何のひねりもなく作られたイカに見える。でも観察すると奥深い世界がしっかり見えてきた。

ここでちょっと考えてほしい。あなたはスーパーの鮮魚コーナーでイカを買おうとしています。どういう基準でイカを選ぶだろうか。多くの人は「透明感」をあげるのではないだろうか。実際、イカは鮮度が落ちると透明感がなくなると言われている。

これをふまえてもう一度張りぼてを見てみよう。

 

f:id:tenyard:20210508231124j:plain

透明感があるぞ!


イカの表皮を綿で作ることで透明感を再現しているではないか。これはイカすぜ!

さらによく見ると、手前にイカの子どもがいることに気づいた。

 

f:id:tenyard:20210428204131j:plain

こっちは味わい深い。

 

紙の胴体にスズランテープの足。足だけ透明。来ました素朴さ。これも好きだ。

 

f:id:tenyard:20210428204441j:plain

函館に行かな🦑?

 

② テープのきりたんぽ(2018年9月)

秋に始まったのは秋田県のキャンペーン。うたい文句は「秋のさくさくあきた」。

そんな秋田県を代表する食べ物といえばこれだ。

 

f:id:tenyard:20210420231737j:plain

秋田のソウルフード、きりたんぽ。

 

炭火できりたんぽを焼き、米が焼ける香ばしさに包まれながら待つ至福の時間。ひっくり返せば焦げ目が見えるのかな。ちょっと見ただけで想像がふくらんでいく。秋田に行きたくなってきた。

なのになんだろうこの胸に残る違和感。よーく見ると、また違う味が見えてきた。 

 

f:id:tenyard:20210428214426p:plain

やはり手作り感にあふれている!

 

見れば見るほど親近感がわいてくる。こんなテープの芯にぴったりサイズな網ってあるんだ。きりたんぽ表面のテープと下の芯ってきっと同じやつだよね。

さくさく魅力が見つかる。見てるだけでさくさく秋田に行きたくなってきた。

 

f:id:tenyard:20210428221200j:plain

このあと実際に行きました。すっかり策略にハマっている。

 

③ ニュースに詳しいなまはげ(2018年9月)

きりたんぽが姿を見せてから1週間。とつぜん仲間が増えた。もう一つの秋田名物、なまはげだ。

 

f:id:tenyard:20210421204759j:plain

きりたんぽの後ろにいた。なまはげなのに存在感ひかえめ。

 

なまはげといえば恐ろしい顔をしたお面だ。つり上がった目に立派な髪。阿佐ヶ谷駅なまはげも特徴をしっかり再現している。でも小さいからかわいい。

さてそろそろ恒例の始めますか。拡大してみてみよう。

 

f:id:tenyard:20210428222120j:plain

髪の毛をよく見ると……?

 

この髪の毛、新聞紙だ。阿佐ヶ谷駅なまはげはインテリだった。なまはげというと怖いイメージがあるけど、この小さくて賢いなまはげなら歓迎して招きたい。いい知恵をさずけてくれそうだ。

 

f:id:tenyard:20210428224610j:plain

秋田の「男鹿真山伝承館」でなまはげ体験。怖さだけじゃなくて地域に愛される存在であることが伝わってきて温かくなった。秋田旅行にオススメです。

 

番外編:阿佐ヶ谷駅張りぼてのルーツは「祭り」にあり?

さて、ここまで紹介してきて今さらだが不思議に思わないだろうか。阿佐ヶ谷駅では、なぜここまでこだわって張りぼてを作っているのだろう。その答えは8月の阿佐ヶ谷駅を見ればすぐに明らかになる。さっそく8月の様子を見てみよう。

 

f:id:tenyard:20210422222514j:plain

張りぼてを発見!(2019年8月)

 

この子は阿佐ヶ谷駅ゆるキャラ「あさくらちゃん」。七夕かざりをモチーフに作られている。何を隠そう、阿佐谷は「七夕の街」なのだ。旧暦の七夕の時期に「阿佐ヶ谷七夕まつり」が開かれ、駅前の商店街は地元の人や観光客で大きくにぎわう。来場者数が80万人以上といえば人気が少しは伝わるだろうか。

 

f:id:tenyard:20210428225211j:plain

駅を出て左を向いた様子がこちら。商店街は人をかき分けないと進めないほどの盛況っぷり。

 

さて、そんな阿佐谷七夕まつり、ちょっと変わったところがある。それは「商店街の人が手作りの張りぼてを作って飾る」ことだ。

 

f:id:tenyard:20210428231230j:plain

見事な出来にうならされる作品があれば、

f:id:tenyard:20210428231246j:plain

親近感がわくものも多い。

 

この作品、既視感がないだろうか。そう、駅の張りぼてだ。張りぼては阿佐谷のDNAに深く根付いている。駅の張りぼては阿佐谷の魂を体現したものだったのだ。

 

④ ツッコミ待ちのカニ(2018年10月)

最後に一番お気に入りの張りぼてを紹介する。カニだ。

 

f:id:tenyard:20210424204845j:plain

見てほしいこのカニ推しを。

 

一目見て思った。これは気合を入れて作られてる。本物顔負けのゴツゴツした殻に肉付きの良いハサミ。出来がいい。ツッコミを入れるとしたらハサミの場所を針金で雑に固定しているぐらいか。

と思っていた。でも気づいてしまった。

このカニ、やっぱり阿佐谷らしさにあふれてる。

 

ここで普通のカニを見てみよう。

 

f:id:tenyard:20210424205926j:plain

秋田旅行での一幕。

 

カニで食べる部位といえば足だ。足にぐいぐいとハサミを入れてぐぎぎと力を入れてようやくパカッと開いて姿を見せるつやつやの身。固いハサミを開くのに苦労する時間でさえ愛おしい。カニ専用のフォークでぐいぐいと食べる過程はもはやエンターテインメント。カニを食べるとき黙るってよくネタにされるけど、ここまで幸せな沈黙を知らない。

さて、もう一度阿佐ヶ谷駅カニを見てみよう。

 

f:id:tenyard:20210424211237j:plain

足に注目。

 

短い足と短いハサミ。食べられる場所がほとんどない。

このカニってもしかして……!

 

f:id:tenyard:20210502170005j:plain

 

何回も言うが、こんな素朴さにあふれた阿佐ヶ谷駅張りぼてが好きだ。

 

最近の張りぼての話

さて、この話にはまだ続きがある。もう少しおつきあいください。

今回紹介した張りぼて、実はどれも2018年のものだ。2019年になってから張りぼての入れかわりが少なくなった。

 

f:id:tenyard:20210424233725j:plain

1月に「パリピなまはげ」が襲来(髪がパーティー飾りなので)。

 

最後に新作を見たのは2019年の8月。七夕まつり期間に出てきたあさくらちゃんだ(「番外編」で紹介したもの)。それを最後に張りぼてはぱったり姿を消してしまった。

どうしたんだろう。でもきっとまた作ってくれるでしょう。そのときは深く考えてなかった。なんてったって、阿佐谷の名物は七夕まつり。きっと来年(2020年)の七夕まつりの時期には新しい張りぼてが出てくるんじゃないか。それを楽しみに待っていよう。

しかし、2020年の七夕祭りはコロナで中止。

 

f:id:tenyard:20210424221605j:plain

8月の様子。張りぼてのない商店街は天井が高く見えた。

 

阿佐ヶ谷駅張りぼてもなし。世の中はコロナ一色。もう張りぼてを愛でることはできないのか。これで終わってしまのか。そんなの悲しい。

 

希望は残っているよ、どんな時にもね

2021年4月2日。桜が満開のある日。その日も阿佐ヶ谷駅を通った。前は桜の張りぼてがおいてあるときもあったっけ。今年の夏はお祭りできるかな。そんなことを考えながら歩いていると――

 

f:id:tenyard:20210424223654j:plain

これは夢か幻か……?

 

思わず頬をつねる。夢じゃない。あさくらちゃんがいた! 誇らしげに入学を祝うあさくらちゃん。

「今年入学の学生も大変なことが多いと思うけどがんばって。応援してる」

そう言っているあさくらちゃんの声が聞こえた(気がした)。心が自然と上を向いた。ありがとう。それにしても張りぼてが復活してくれるとは!

 

f:id:tenyard:20210424231003j:plain

ホントによかったよ!(スタンプラリーは残念ながら中止)

 

冷静になって考えると

だいたい2年ぶりの張りぼて復活。丸1日喜びが続いた。でも次の日気づいた。気づいてしまった。あのあさくらちゃん、もしかして前と同じ張りぼてなのでは?

前に飾られていたあさくらちゃんと見比べてみよう。

 

f:id:tenyard:20210429181656j:plain

顔のしわの位置が同じだ……。

 

2年ぶりに見た張りぼては、過去の張りぼてをリメイクしたものだった。もちろん張りぼてを見られてうれしいのは変わらない。ただそうなると気になることがある。今後はどうなるんだろう。新作を期待していいのか、それとももう作られることはないのか。

気になったので問い合わせてみた。返答の転載は禁止されているので細かいことは書けないが、一つわかったことがある。それは、「今後新しい張りぼてが作られる予定はない」ということだ。そうか……。

でも張りぼてのおかげで毎日が少し楽しくなった。そして阿佐ヶ谷駅を好きになれた。ありがとう。

 

最後に

あさくらちゃんの登場から2週間後。再び阿佐ヶ谷駅を通った。あさくらちゃんはもう姿を消していた。

 

f:id:tenyard:20210514232517j:plain

日常が戻った。

 

あさくらちゃんは七夕をモチーフにしたゆるキャラだ。今年か来年か七夕まつりが復活したら、あさくらちゃんの張りぼて姿がきっとまた見られる。また阿佐ヶ谷駅張りぼてが見られる日を楽しみに待っていよう。

七夕の街 阿佐谷。そんな街の駅では、素朴な張りぼてが代り映えのない毎日に彩りを添えていた。

川沿いにあるスピーカーの謎を解いたら洪水との戦いが見えてきた

f:id:tenyard:20210329143214j:plain

 

「河川水位警報機」というものがある。川があふれそうになったときに警告するスピーカーのことだ。その姿は縁の下の力持ちそのもの。出番は多くても年に数十回。防災無線のように毎日テスト放送をするわけでもなく、ひたすら川を見つめ続ける。なんてひたむきな奴なんだ。ここまで健気な存在を他に知らない。もっと詳しく知りたい。気づいたら水位警報機に熱い視線を注いでいる自分がいた。

 

f:id:tenyard:20210321194901j:plain

赤いスピーカーが目印。

 

ある日、水位警報機をながめながら歩いていて引っかかりを覚えた。水位警報機の配置がなんか変だ。警報機同士が極端に近いものもあれば、数キロ歩かないと次の警報機がない場所もある。なんでそんなにばらつきがあるんだろう。何か理由があるに違いない。そこで、近所の川である善福寺(ぜんぷくじ)川を歩いて調べてみることにした。見えてきたのは、度重なる洪水に負けじとひたむきに進化を続ける街の姿だった。

今回は、杉並区民のオアシス、善福寺川で水位警報機の謎を解き明かします。

 

水位警報機の位置の謎

突然だが問題だ。ここに杉並区を流れる善福寺川の地図がある。もし「川ぞいに水位警報機を14ヶ所設置してください」と言われたらどうするだろうか。

 

f:id:tenyard:20210305230828p:plain

(地図は オープンストリートマップ, 杉並区水害ハザードマップ より作成)

 

多くの人はおそらくこう考えるんじゃないだろうか。

 

f:id:tenyard:20210305230902p:plain

「とりあえず均等に配置すればいいんじゃね?」

 

一定の間隔で並べればいい、と。
ところが、実際の配置はこうだった。

 

f:id:tenyard:20210305231052p:plain

水位警報機も下流に流されている……? いや、まさかね。

 

下流にかたよっている。なぜだなんでだろう? 頭の中でテツ and トモが歌いだした。ネットで一応調べてみたけど、水位警報機の分布を調べた人はなし。ですよねー。

こういうときは目で見て調べるのが一番。実際に行ってきました。

謎:なぜ水位警報機の分布がかたよっているのか?

 

水位警報機を三つのタイプに整理する

今回善福寺川の始まりから終わりまで、水位警報機をながめながらテクテク歩いた。11キロのショートトリップ。

 

f:id:tenyard:20210310204406j:plain

源流の善福寺池。のんびりのどかなところ。

f:id:tenyard:20210323204010j:plain

池の入り口で愛を問われる。

f:id:tenyard:20210328180901j:plain

そびえる家に細い道。歩きづらいけど下町っぽくて好きだ。

そよ風。ぽかぽか太陽。さらさら流れる水の音。まぶたが重くなる。近くのベンチもベッドに見えてきた。

 

f:id:tenyard:20210323204122j:plain

川の横に水位警報機を発見!

 

そうだった、今日の目的は水位警報機。
さて、今回の歩きで目に入った水位警報機を三種類にわけて紹介しよう。

  • 川沿いタイプ
  • 調節池タイプ
  • 近接タイプ

f:id:tenyard:20210321173623j:plain

分布はこんな感じ。

 

あと善福寺川のおすすめスポットをちょこちょこ挟んでおくので、箸休めにどうぞ。


川沿いタイプ(①, ②, ⑤~⑧, ⑫)

f:id:tenyard:20210321174026j:plain

 

まずは一番普通のやつだ。普通に川沿いにあるパターン。

 

f:id:tenyard:20210313222327j:plain

こう見ると水位警報機ってなかなかフォトジェニック。(②)

  

f:id:tenyard:20210327134733j:plain

水位警報機のお向かいに白線が引いてある。この目盛りを超えると警報が鳴るしくみだ。

 

河川警報機を弁当の世界で例えると梅干しだろうか。普段は当たり前のようにいるけど、非常時(体調不良)には唾液の分泌を助けてくれるし身体にしみわたる。そんなたよりになるやつ。

 

f:id:tenyard:20210313231330j:plain

日常で気にする人はほとんどいない。非常時以外はそれでいい。(⑧)

 

ところで、一台気になる水位警報機があった。一番上流のやつだ。

 

f:id:tenyard:20210313232945j:plain

防災無線と一体化している。下側の赤いスピーカーが水位警報機。(①)

 

水位警報機の上流に広がっている景色を見てほしい。

 

f:id:tenyard:20210313233106j:plain

土嚢(どのう)だ。ひざの高さまでびっしり。

土嚢というと、大雨が近づいたときに急いで積むイメージがある。ということは、わりと最近にここで洪水があったのだろうか。

水位警報機の分布を考えるうえで、洪水は何か関係しているのかもしれない

 

f:id:tenyard:20210327140023j:plain

オススメスポット①「川沿いの桜」

善福寺川は桜の名所。春は地元民が集う。来年こそは桜を見ながらタコ焼きと焼きそばを食べてやるんだ。

 

調節池タイプ(⑨, ⑩, ⑪)

次は「調節池」の近くにある水位警報機だ。調節池とは、大雨のときに水を入れることで洪水を防ぐ空間のことだ。調節池タイプの水位警報機は三つ。順番に見ていこう。

 

f:id:tenyard:20210314143522j:plain

街灯と仲がよさそうな水位警報機を発見(⑨)。左の柵に目を向けると……?

 

f:id:tenyard:20210328181858j:plain

野球場だ。バッターが腰の曲がったおじいさんで思わず応援した。

この広さよ。大雨のときはさぞや頼もしいことだろう。

調節池は川があふれるのを防ぐ一方で、万が一許容量を超えれば周りに被害を与えてしまう一面もある。近くに水位警報機があるのは納得だ。洪水対策の近くに水位警報機あり

  

二つ目の調節池に行こう。こちらもスポーツ施設になっている。今度はテニスだ。

 

f:id:tenyard:20210314152302j:plain

水位警報機の奥が調節池だ(⑩)。野球場と比べると小さめ。

f:id:tenyard:20210314152840j:plain

内側はテニスの壁打ち場になっている。けっこうにぎやか。

 

このテニスの壁打ち場を見たとき、突然鮮やかに映像が思い浮かんだ。よみがえる苦い記憶。

中学生のとき、僕は硬式テニス部に入部した。部活が休みのある日、部員メンバーで壁打ち場に行こうって話になった。

あのころはテニスが下手だった。順番が来る。思いっきり壁にボールを打つ。そのまま勢いよく返ってくるボール。あわてて打ち返す。ラケットの端に当たる。真横に飛んでいくボール。ボールは横で打っていたおじさんの顔面に吸い込まれるように

「スパコーーン!」

直撃だった。吹っ飛ぶメガネ。崩れ落ちるおじさん。そのあと記憶がない。たしか優しい人でそのまま許してもらえた。水に流してもらえた。調節池だけに。あれ以来、壁打ち場を見るたびにあのおじさんへの申し訳なさがよみがえる。

楽しく散歩していたのに水を差されてしまった。調節池だけに。そそくさと立ち去る。

 

気を取り直して次に行こう。三つ目の調節池だ。実はそっちも部活のメンバーで使ったことがある。だからしっかり覚えてる。テニスコートだ。行ってみよう。

 

f:id:tenyard:20210314153507j:plain

記憶だと左側にテニスコートが1面あった。フェンスにおおわれてる。(⑪)

 

だが、かつてテニスをした場所は工事中の様子。中をのぞいてみよう。

 

f:id:tenyard:20210315111658j:plain

土が掘り返されていた。かつてのテニスコートよりも広いぞ。

 

何の工事をしてるんだろう。きょろきょろ。フェンスに説明書きを見つけた。

 

f:id:tenyard:20210314154703j:plain

前よりも大きな調節池を造っているのか!

 

さっきの土嚢と同じだ。確信した。まだ川との戦いは続いているんだ。

  

f:id:tenyard:20210313154316j:plain

オススメスポット②「川にいる野鳥」

川沿いは野鳥の宝庫。善福寺川の一番人気はオオタカだ。いいカメラを持ってないので鷹を撮ってる人を撮った。

 

近接タイプ(③, ④, ⑬, ⑭)

 最後は「近接タイプ」だ。どういうことかというと――

 

f:id:tenyard:20210321174246j:plain

 

③④と⑬⑭がめちゃくちゃ近い。これは気になる。どんな様子か見てみよう。

まずは③④だ。

 

f:id:tenyard:20210313232349j:plain

④の水位警報機を発見。エモい。近くの家に住んでこの景色を眺めながらすごしたい。

川から離れたほうはどうだろう。川の横の道を曲がる。すぐ近くの公園に見覚えのあるスピーカーが見つかった。

 

f:id:tenyard:20210315113405j:plain

いたって普通の公園だ。名前も「荻窪公園」と平凡。(③)

 

なんでここにあるんだろう。善福寺川近くの公園はたくさんある。でも水位警報機がある公園はここだけ。しかも水位警報機と川の距離はたったの100メートル。うーんわからん。You(河川警報機)は何しに公園へ?

 

ちなみに、もうひとつのペア、下流の水位警報機もほぼ同じだった。

 

f:id:tenyard:20210315165211j:plain

ひとつは川沿い。鋭角の部屋に住んでみたい。(⑬)

f:id:tenyard:20210315114923j:plain

川から1分の住宅地に水位警報機を発見。明らかに住宅の中で浮いてる。(⑭)

 

新たな謎ができてしまった。

謎2:川から離れた水位警報機はなぜある?

 

f:id:tenyard:20210313170828j:plain

オススメ③:下流の八重桜

ベストは散りかけの4月末。カーペットじゃなくて全部花びらです。

 

謎を整理しよう

ここでもう一度謎を整理しよう。

  • 謎1:なぜ水位警報機の分布がかたよっているのか?
  • 謎2:川から離れた水位警報機はなぜある?

f:id:tenyard:20210329211527j:plain

ここからは調査と推理の時間だ。歩いても分布の理由は解けなかった。でも手がかりは得られた。それが「洪水」だ。その線で調べてみよう。

 

一つ目の謎を解こう(水位警報機の分布)

まずは水位警報機の分布の謎だ。

「――さて」

とつぜん脳内に男が現れた。パイプをくゆらせ安楽椅子に腰かけている。

「まっさきに見るべきはハザードマップだろうね。水位警報機もハザードマップも洪水対策から生まれたものだから」

正体は探偵だった。なるほどハザードマップか。調べてみよう。

f:id:tenyard:20210327181202j:plain

分布とハザードマップを重ねてみた。色がついている場所が浸水の可能性が高い場所だ。(杉並区水害ハザードマップより作成)

 あれれ、おかしいな。川の近くにまんべんなく浸水しそうな場所がある。これだったらやっぱり均等に配置したほうがいいんじゃないか。

あなた、本当に探偵?

「なになに、説を一つ言ってみただけだよ」

ふーん、あやしい。

 

 

よみがえる洪水の記憶

「じゃあ次の説に移ろう。歩いて見つけた『手がかり』をもう一度思い出してごらん」

手がかりって、「洪水」のこと?

「ならば、過去の洪水が関係しているとは考えられないかい?」

たしかに。過去の洪水ってなにかあったかな。

 

そうだ。洪水あったよ。浮かんだのは丸ノ内線。中学生のとき、僕は毎日東京メトロ丸ノ内線に乗って通学していた。あれは2005年の9月のこと。土日に豪雨が吹き荒れた。川があふれ各地で浸水が発生。

typhoon.yahoo.co.jpそして月曜日。駅に行くとUターンする人の群れ。止まっていた。原因は「車庫の浸水」。車庫は善福寺川の近くにある。どこか他人事だと感じていた災害。本当に大変なことが起こっていたんだと身体が強ばった。

 

「やはりか。じゃあ調べてみたまえワトソン君」

助手にされてるのは気に食わないけどオーケー。2005年の洪水被害を調べよう。

すぐに浸水被害の地図が見つかった。これでいよいよ真相が明らかに……!

 

f:id:tenyard:20210321163904j:plain

青と緑が浸水した場所だ。川の周りはほぼ浸水。こんなに被害が広かったのか……。(国土交通省HPより作成)

 

うーん。この被害だったら川全体にまんべんなく水位警報機を設置したほうがいい。ハザードマップと同じ結果だ。

というか今完全に謎が解ける流れだったよね探偵さん?

 

さらに前の洪水から謎が解けた!

「なになに、あきらめるのはまだ早いよ」

外れたのに大した自信だね。まだ手はあるってことか。

「洪水があったのは2005年だけかい? もっと前にもあるだろう?」

言われてみればたしかに。わかったよ探偵さん。次に見るべきはさらに昔の洪水だ。

調べてみると、大きな災害が二つ出てきた。一つ目が1982年。39年前に来た台風18号。1084棟が浸水することとなった。二つ目は丸ノ内線が止まった2005年。このときは2314棟が浸水することとなった。

「ビンゴのようだね。じゃあ1982年の洪水を調べてみようじゃないか」

言われなくたってわかってるよ。1982年の洪水のマップを見てみよう。

 

f:id:tenyard:20210321165057j:plain

赤が浸水した場所だ。これは……!(東京都建設局 昭和57年の水害記録より作成)

 

これだ! 赤い色にそって水位警報機が設置されている。特に⑥と⑫は、洪水があった場所に造られたのが明らかだ。

結論が出た。水位警報機の分布がかたよっているのは「1982年の洪水をきっかけに設置されたから」だ!

 

f:id:tenyard:20210321211933j:plain

図書館で調べると1982年11月の「杉並区広報」に答えがのっていた。やはり洪水がきっかけで設置されたんだ。

 

解けていなかった……

やったぜ解決。ふふん。

「本当にそうかな」

なんだよ達成感にひたってたのに。一応話は聞くけど。

「上流の水位警報機の場所を見直してくれたまえ」

わかったよ。さっきの浸水の図をながめる。あれれ? 被害のない場所にある水位警報機を見つけてしまった。

 

f:id:tenyard:20210329182135j:plain

見つけたからには無視できない。

 

一難去ってまた一難。

「落ち着きたまえ。もう手がかりはそろってるよ」

息を吸って吐く。すぐに理由が思い立った。1982年に被害がなかったなら、①②の水位警報機は丸ノ内線が止まった2005年の洪水がきっかけで設置されたんじゃないか?

 

f:id:tenyard:20210329182209j:plain

もう一度2005年の浸水被害を見てみる。①②の近くは被害が大きい。つじつまは合うぞ。

 

 「そういうことだよ。君もやるじゃないか」

裏付けも見つかった。

河川水位、雨量計、警報機の増設箇所でございますが、まず、善福寺川の上流部丸山橋というところにあります水位・雨量・警報局、これを新しく増設しました。それからその下の本村橋のところも、水位・雨量・警報局を新しく増設しました。

(杉並区議会 委員会議事録 平成18年6月23日都市環境委員会より)

丸山橋と本村橋とは、上流の水位警報機①②がある場所だ。

上流の水位警報機は、やはり2005年の洪水がきっかけで設置されたものだった。今度こそ解決だ。

「君はもう大丈夫そうだね。二つ目の謎は君の力で解いてごらん」

ありがとう探偵! がんばるよ。

 

謎1のまとめ

謎1:なぜ水位警報機の分布がかたよっているのか?

⇒三つのきっかけで設置されている。

  1. 調節池の近く
  2. 1982年の洪水被害があった場所
  3. 2005年の洪水被害があった場所

f:id:tenyard:20210329182326j:plain

図にまとめてみた。

 

二つ目の謎を解こう(川から離れた水位警報機)

いよいよ二つ目、最後の謎を解こう。川から離れた水位警報機(③と⑭)がなぜあるのか。正直、ここまでいろいろ見てきた。知識も身についた。探偵のおかげ(?)で自信もついた。それならば、現地に行けばもうわかるはずだ。再び善福寺川にひゅーうぃーごー。

 

f:id:tenyard:20210321174246j:plain

 

貯水施設の入り口発見!

再び舞台は善福寺川へ。最初は下流の⑭から見ていこう。

f:id:tenyard:20210315114733j:plain

やってきました。春だねえ。

f:id:tenyard:20210315171229j:plain

対岸から見てみよう。下に空間がある……?

 

いきなり手がかり発見! 川の下側が空洞になっている。そして上には「善福寺川取水施設」と書かれた建物。

敷地のフェンスに答えが書いてあった。これは「神田川・環状七号線地下調節池」の入り口とのこと。

説明書きによると、環状七号線の地下に巨大な地下空間が造られているらしい。直径12.5メートル、長さは4.5キロメートル。ちょっと想像できない。

検索すると動画が出てきた。月並みな言葉だけど、めちゃくちゃでかい。

 

www.youtube.com

 

完成は2007年。以降、善福寺川下流神田川の浸水被害は激減したという。完成までどれだけの困難があったんだろう。地上以上に費用がかかる地下に巨大な施設を造るなんて。どれだけの熱意があったんだろう。

川から離れた位置に水位警報機があるのは、巨大な地下調節池の情報を住民にいち早く伝えるためのものだった。

 

公園で貯水施設を探す

最後に残ったのは上流の水位警報機(③④)だ。上流に行ってみよう。

 

f:id:tenyard:20210315171019j:plain

再びやってきました荻窪公園。構内の地図を見ても特に情報はなし。

 

なにか手がかりがあるはずだ。具体的には取水施設とかそういうやつ。うろうろしてたらやっと見つけた。

 

f:id:tenyard:20210315175605j:plain

ポンプ制御盤を発見!水をくむポンプがあるなら地下に水をためる場所があるはずだ。

 

さて、答え合わせをしよう。

東京都下水道局では、現在、荻窪2丁目の荻窪公園を起点として、雨水を一時的に貯留するための工事を進めており、今年度末の完成を目指しているところでございます。
杉並区議会 委員会議事録 令和元年第4回定例会 11月19日-23号より)

地下の調節池により洪水の被害が減った下流。しかし、上流の被害はおさまっていなかった。どげんかせんといかん。新たな対策が立ち上がった。そのひとつが荻窪公園というわけだ。

荻窪公園の地下には、雨水をためる「貯留管」が650メートルにわたって設置されていた。そして洪水との戦いはまだ続いているのだ。

 

謎2のまとめ

謎2:川から離れた水位警報機はなぜある?

⇒水位警報機の近くに貯水施設があり、いち早く異常を伝えられるようにしている。

 

最後に

水位警報機の配置になんとなく違和感を覚えて始めた調査。最後は地下の巨大空間にまで行きつくとは。トカゲの生態を調べていたらワニにたどり着いたみたいな驚きだ。

今まで当たり前のようにすごしていた杉並の街。実は長い間水害に苦しみ続けていた。そのたびに新たに計画される対策。水位警報機に調節池、地下調節池、地下貯留管。まさかここまで多様な対策を取っているとは。

 

f:id:tenyard:20210329182638j:plain

図にまとめてみました。

 

そして戦いは今も終わっていない。川沿いでの工事は続き、今も新たな調節池が造られている。俺たちの戦いはこれからだ!

なにか気の利いた言葉で締めようと思ったが、ちょっと言葉が出てこない。長く計画を進めてきた行政に、そして静かに流れているだけに見えて「水面下」で進化を続けている善福寺川にありがとうと言いたい。これからもよろしくお願いします。

 

参考文献

 

おまけ:今回紹介できなかった善福寺川の洪水対策設備

和田弥生幹線

地下の巨大施設は「神田川・環状七号線地下調節池」だけじゃない。善福寺川下流には直径8.5m延長2.2kmの貯留管が造られている。

www.youtube.com

ちょーでかい!

 

善福寺川調節池

善福寺川中流(⑤と⑥の間)にある調節池。公園の地下部分に造られている。

f:id:tenyard:20210321175206j:plain

画像は東京都建設局より。

 

杉並区上荻四丁目付近善福寺川流域貯留管

善福寺川近くの道路沿いに造られている貯留管。こちらは現在建設中。

都会にある沖縄の魔除け「石敢當」が個性的でおもしろい

f:id:tenyard:20210202211506j:plain

 

石敢當(いしがんとう)」を知っているだろうか。石敢當は沖縄の魔よけで、沖縄の路地ではふつうに見ることができる。この風習、実は東京近郊にもちょっとずつ入ってきているのだ。

最近都会にある石敢當が、沖縄のものとは違った魅力を放っていることに気づいてしまった。住宅地やお店。その場所によってたくみに姿をかえ街なみにとけ込んでみせる健気さよ。一つ一つが個性豊かで愛おしくてならない。

 

今回はそんな都会にある石敢當を5個紹介したい。これを読み終われば石敢當が気になってしかたなくなっているはずだ。そして一緒に石敢當、探しましょう。

 

そもそも石敢當とは?

まずは石敢當とはなにか簡単に紹介する。

石敢當とは沖縄でよく見られる風習だ。沖縄の魔物「マジムン」はまっすぐ進む性質がある。そのため、T字路やY字路に石敢當をおくことで敷地に侵入するのを防ぐことができるという。玄関にシーサーをおくのとほぼ同じ効果だ。

では石敢當とは具体的にどんな姿なのか。こういうときは百科事典を見てみよう。Wikipediaを見ると石敢當の写真がのっていた 

 

f:id:tenyard:20210116220818j:plain

石と武骨な文字。これが一般的な石敢當の姿だ。(画像はWikipediaより)

 

形は様々で、「石敢当」「泰山石敢當」「石敢當」と文字のバリエーションもあるとか。

ではこれが都会だとどんな姿になるのか。お待たせしました。いよいよ本題です!

 

1. 暗渠にある石敢當

最初に紹介するのは川の跡、「暗渠」にある石敢當だ。実はこの石敢當、僕がハマるきっかけになった一番好きなやつだ。

この魅力を伝えるためには暗渠がどんなところか知ってもらう必要があるので、まずはそこから。暗渠とはいろいろなものがあるが、多くの暗渠に共通しているのが「飾らない雰囲気」だ。

 

f:id:tenyard:20210119231317j:plain

普通の道よりもちょっと雑多な感じがわかるだろうか。

 

世の中のものを「ハレ」と「ケ」にわけるとするなら、暗渠はまちがいなく「ケ」に含まれる部類のものだ。暗渠は日常の延長線上にあるもの。歩いていると「人間の本質」をのぞくことができる。

 

f:id:tenyard:20210119231506j:plain

壁に落書きが。人は見られない場所だと悪行を働いてしまうものだ。

f:id:tenyard:20210119231630j:plain

親切な注意書きが段差にあった。人には善の面もあり、思いやりの積み重ねで世界は回っている。

f:id:tenyard:20210119231956j:plain

洗濯機に雑巾。生活感あふれる姿が見られるのも暗渠の楽しいところだ。

 

失礼。つい暗渠が好きで話しすぎてしまった。そんな人間の本質が見られる暗渠の石敢當に会いに行こう。まもなく到着だ。暗渠道を歩いていると不思議な石が目に入る。

 

f:id:tenyard:20210119232143j:plain

暗渠の街角で、運命の出会いをした。

 

右側の石が石敢當だ。詳しく見てみよう。

 

f:id:tenyard:20210119232209j:plain

この手作り感、いい。いいぞ!

 

まさかの「手彫り」だ! ここまで素朴な石敢當って日本全国探してもなかなかないと思う。沖縄と違い簡単に石敢當が手に入らないから手作りしたのだろうか。

 

f:id:tenyard:20210119232437j:plain

見てほしいこの刻まれた字を。がんばって彫ったんだろうな。

 

日本では万物に神は宿るといわれている。一人が神聖さを感じればそこから信仰は始まる。その始まりの姿こそ、この石敢當なのだ。

まさか暗渠の石敢當で日本の文化の根源を学べるとは思っていなかった。石敢當、深いぞ。

 

f:id:tenyard:20210119232528j:plain

ワイヤーで塀に固定している。この素朴さもたまらぬ。

f:id:tenyard:20210119232837j:plain

アングルを変えて撮ってみた。よく見ると右に傾いていてこれもいい味出してるなあ……。

 

ふと石敢當の近くから視線を感じた。肩入れするあまり神聖な気配すら感じることができるようになってしまったのか。この石敢當、ますますただ者ではない。と思いつつも視線をたどってみた。石敢當から視線を上げる。

 

f:id:tenyard:20210119232728j:plain

家の守り神と目が合った。かわいい~~

 

2. 普通の住宅地にある石敢當

次は古くからある杉並の住宅地だ。家は庭つきの一軒家からアパートまでさまざま。多くの人が「いたって普通の住宅地」と感想をもつ場所だ。

 

f:id:tenyard:20210116233359j:plain

そんな普通の街のT字路にやってきた。

 

この写真を見て気づいただろうか。実はすでに石敢當が写っている。

 

f:id:tenyard:20210116233450j:plain

正解はお向かいの塀です!

 

このひかえめさよ。最初に見せた沖縄の石敢當と比べるとこじんまり。知っている人は気づくけど、石敢當を知らない人は素通りするぐらいの存在感。目立たなさ。いい。

 

 

 

石敢當を見ていると大学時代の友人を思い出した。ふだんは物腰がやわらかで目立たないやつ。でも勉強が好きで、数学の話になるととたんに頼もしいやつに早変わり。その学問へのまっすぐな姿勢にまぶしさを感じたものだ。

彼の芯の強さはこの石敢當と同じだ。卒業から連絡をとってないけど、きっと今も石敢當のように堅実にがんばっているんだろうな。

 

普通の住宅地では、ひかえめだけど芯の通った石敢當と出会うことができた。

 

3. おしゃれな住宅地にある石敢當

今度の舞台はさいたま市の住宅地だ。

 

f:id:tenyard:20210117113711j:plain

生垣とカーブにゴミ一つない通り。まさに埼玉の田園調布といったおもむきの場所だ。

 

見てほしいこの優雅な街なみを。小説に出てくるような白いワンピースを着たお嬢さんが歩いている姿が目に浮かぶ。

一目ですっかり気に入ってしまった。自然に手と足が動く。深呼吸する。この街を全身で感じたい。写真の撮影時間をあとでチェックしてみると、1時間も街中を歩いていた。街並みは1キロちょっとしか続いてないのに。「日本の住宅地百景」なんてものがあればこの街並みを推したい。

 

さて、もっと話したいけど今日の主役は石敢當だ。この街にとけこめる石敢當ははたしてあるのだろうか。武骨な石の姿が合うとは思えないし、かといって目立たないようにするのもこの街ではちがう気がする。予想は白いワンピース。それはないか。さていよいよご対面だ。

 

f:id:tenyard:20210117114433j:plain

どこにあるかわかるだろうか。写真の真ん中をよーく見てほしい。

f:id:tenyard:20210117114513j:plain

「あーなるほどね」思わず声が出た。これは高級住宅地になじんでますわ。

 

そうきたか。これはさっきの石敢當と比べて「遊び心」がある。守り神シーサーと手書き(風)で「石敢當」の文字。色も沖縄らしく赤みがかっている。まさにおしゃれな住宅地にふさわしい石敢當だ。おみやげにこの石敢當のキーホルダーがあったら売れるにちがいない。少なくとも僕は買う。

どうだろう。石敢當に個性があることをちょっとはわかってきただろうか。

 

4. おしゃれな住宅地にある石敢當

次は東京の三鷹市にある住宅地。三鷹といえば「三鷹の森ジブリ美術館」。さらに「おしゃれな街」で有名な吉祥寺駅のとなり駅でもある。とうぜん住宅地にもそのおしゃれなDNAがしみわたっている。石敢當がいるのはそんな街の一軒家の一つだ。

 

f:id:tenyard:20210117121021j:plain

大谷石の門に洋風のポストがなじんでいる。さて石敢當はというと……?

f:id:tenyard:20210117121150j:plain

やあまた会ったね。

 

同じデザインだ。まさかの石敢當かぶり。

ネットで調べてみると見つけてしまった。この石敢當楽天で売ってる。4000円でおしゃれな街のシーサーが買える。一家に一台石敢當。これをつければたちまち高級住宅に様変わり。一ついかがでしょうか。

 

f:id:tenyard:20210203210834j:plain

近くの電柱に業者のシールがたくさん。この石敢當はセールスを防ぐ効果もあるのだ(断言

 

5. 商店街の近くにある石敢當

気を取り直して、今度は意外な場所にある石敢當を紹介しよう。場所は吉祥寺の商店街から歩いて5分ぐらいのところだ。どどん。

 

f:id:tenyard:20210117132157j:plain

植え込みにちょこんとたたずんでいる姿を発見!

 

f:id:tenyard:20210117224935j:plain

沖縄らしい赤瓦だ。今までのとはまたちがう雰囲気。

 

沖縄の古い家には赤瓦が使われているものが多い。今回の石敢當もおそらくその赤瓦なのだろう。住宅地のようなかわいさはないけど、どこか和風を感じさせる植え込みと鉢の間に違和感なくとけ込んでいる。

さて、この石敢當の真のおもしろさは実はここから。まずはこの石敢當がいる場所を見てほしい。

 

f:id:tenyard:20210117225829j:plain

実はこれ、お好み焼き屋さんの装飾として使われているのだ。
(左側の植え込みにあるのが石敢當

 

白と茶色のコントラストに石敢當もなじんでいる。このセンスの良さよ。さすが店の装飾だ。石敢當も鼻が高いにちがいない。

でもこの石敢當の魅力はこれだけじゃないんです。引きにして見てみると……?

 

f:id:tenyard:20210131160930j:plain

石敢當のイメージが根底からくつがえされた瞬間だった。こんな大通りにあるのか!

 

この石敢當にはじめて出会ったのは、車に乗って家族で出かけたときだった。窓の外をながめていると突然の石敢當。大通りに石敢當があるわけがない。幻覚か? いや現実だ! 思わず「ふぇあっ!?」と変な声。家族に心配された。

発見したうれしさのあまり「ユリイカ!」と叫んで裸で街を駆け回ったアルキメデスを今は笑うことができない。

 

そして最後に一つ、この石敢當で僕が一番好きなところはここだ。

 

f:id:tenyard:20210131161012j:plain

よく見るとT字路だ!

 

おわかりいただけただろうか。T字路になっているのだ。店の装飾としてとけ込んでいる石敢當は、本来の石敢當の役割もきちんと果たしていた。飾りとおもいきや現役で店を守っている。こういうけなげさに弱い。石敢當、今日もがんばって守っているんだな。

 

まとめ

お地蔵さんや記念碑。街なかにはたくさんの石像やオブジェがある。それらの管理者はたいてい自治体や町内会だ。一方で石敢當は完全に個人が設置するもの。そのぶんひとつひとつに個性がにじみ出ていて奥が深いのだ。

 

見つけたらぜひ足を止めてながめてみてほしい。見れば見るほど、その場所ならではのイカした姿に目が離せなくなってくるはずだ。