謎の地名「ヨシッ堀田代」に行く

「ヨシッ堀田代」という場所があるらしい。頭に浮かんだのはヘルメットをかぶって指をさす生き物だ。

グーグルマップでも存在が確認できる。しかしレビュー数は0。

いったい何が「ヨシッ」なのか。謎めいた名前の場所には何がいるのだろう。

その真相にせまるため

我々はジャングルの奥地へと向かった。

 

いざ現地へ

ヨシッ堀田代へ行くことにしたのはいいが、たどり着くまでが意外と長かった。

ここからはヨシッ堀田代に着くまでの工程をダイジェストでお送りします。

 

朝の6時。無理やり頭を起動させ、駅に向かって足を運ぶ。

朝の7時、バスタ新宿で高速バスに乗り込む。

出発だ。

高速バスに揺られ

乗り合いバスに乗り換え

出発から5時間後、ようやく入口がある小屋に着いた。

ここからは徒歩となる。時間は12時。いよいよ森へ出発だ。

ということで、今回の舞台は尾瀬です。

尾瀬と聞いてどのようなイメージが浮かぶだろうか。知っている人は、池や草原が広がっているのどかな光景が浮かぶと思う。

しかし、その予想は裏切られることとなる。歩き出してすぐ異変に気づいた。

ひたすら続く森を歩いていく。

先が見えない山道か。どうやら、簡単にいい景色には出会わせてもらえないらしい。

足を進めていくと、途中で見慣れないものが目に入った。

「鐘」だ。

観光地でカップルが鳴らすやつがなぜ森に……?

説明を見るとクマよけ用に鳴らしてくださいとのこと。バチで鐘を叩くと「カーン」と力強い声が響いた。

チリンじゃないんだ。でも実用的な音だ。

この鐘、また出てくるので覚えておいてください。

 

開けた視界

1時間後、足が止まった。

山小屋を通りすぎたあとの景色が

これ!

思わず手を空に広げて走り出したくなるような、「人間はちっぽけだ」とかありきたりな言葉が頭に浮かぶような大パノラマが現れた。

待ってました。

沼地なので池や川が順番に出てくる。無限に歩いていられる。

ここから「ヨシッ堀田代」までは1.5時間だ。

ひたすら気持ちいい景色を進んでいく。

ここを歩いていると大体のことを許せる気持ちになってくる。

しかし、こんな場所にある「ヨシッ堀田代」って何かあるんだろうか。もし何もなかったらどうしよう。

雨が降ってきた。

雨具をかぶる。

嫌な予感がする。

 

ヨシッ堀田代に着いたが……

時間は14時すぎ。そろそろヨシッ堀田代に着くはずだ。

ヨッピ吊橋を超える。この地名、ヨシッと近いぞ。

そしていよいよ、地図にピンが立っていた場所に着いた。

何もない……。

そこには「草原」がひたすら広がっていた。

けものフレンズ」のさばんなちほーと似てるような?

わーい! いいけしきー! と現実逃避中。

撮るものがなさすぎて草の写真を撮った。

いや、まだあきらめるのは早い。何かあるはずだ。空港のレーダーのように首を回して探し回ると、一つあった。

あの、クマよけの鐘が立っていた。

バチをよく見てほしい。

金槌だ!

ここにきて突然の工具。これは、あの猫がいた証拠なのでは! よくわからんけどヨシ!

叩いてみる。

「カーン」

NHKのど自慢」でサビに入った瞬間に鐘が鳴って退場した人のやりきれない顔が浮かんだ。

今ならちょっと、気持ちわかるよ。

 

調べられない……!

こうなったら山小屋に着いてからインターネットの力を使って調べよう。

ヨシではなく「"ヤシ"ろう小屋」に到着だ。

しかし、一つ誤算があった。ここは、民宿でなく「山小屋」だ。スマホを開くと、出迎えてくれたのは「圏外」の二文字だった。

一応Wi-Fiはつながるが速度は3Gレベル……。画像が上からゆっくり現れる趣きを久々に味わうこととなった。

いとおそし。

夕食! 4人で一つのおひつを分け合う方式が山小屋らしくて良い。しっかりお代わりしたらほかの人の分が少なくなりちょっと申し訳なかった。

しかたない、明日急いで帰って調べることとしよう。

おやすみなさい。

 

快晴の朝

そして次の日。天気は良好。

霧がかっていてなかなか幻想的。深く息を吸った。

ただの草原でさえも絵になる。

急ぎ食事をすませ、出発だ。早く人里に戻って調べたい。

すたすたと足を動かす。霧が晴れた。

すっかりいい天気!

雲と水面ってなんでこんなに映えるんだろう。

天国ってこういう世界だったりするんじゃいか。ぽかぽかした中で絶景を歩いていると、現実と夢の境界線があいまいになってくる。

時間に追われる生活に帰りたくなくなってきた。

早くヨシッの謎を知りたい。でも、もっとのんびりしたい。

ほら、腹は減っては戦はできぬっていうし。

窓から見える景色がこれ。ちなみにまだ圏外です。

 

旅の終わり

お店でボーっとしてから、再び歩き始めて1時間。人里が見えてきた。

護岸だけでも「文明だ!」って騒ぎたくなるこの感覚、登山する人ならわかると思う。

この橋をこえればゴールだ。

こうして、ゴールの茶屋へ到着した。

スマホを見る。一日ぶりに見る「4G」の文字がそこにはあった。

さあ、調査を始めよう。

ゴールの建物にある地図にも「ヨシッ堀田代」があった。

 

明らかになった正体

由来を調べるときに重要なのは、「古い文献をたどること」だ。昔の本に記述があれば古い地名だとわかるし、なければ最近できた地名だと目星が付く。

ではヨシッ堀田代はどちらか。

意外なことに、古い地名だった。

 

デジタル図書館で調べていると、1960年の尾瀬の本を見つけた。そこに手がかりがあったのだ。

ヨシッ堀田代はこのあたり。(『尾瀬・日光 (アルパインガイド ; 第10) 』より引用)

細かく地図をなぞっていく。思わず「そういうことか」と声が出た。

地図の「地名」をよく見てほしい。

「田代」という地名がたくさん出てくるのがわかるだろうか。

このあたり一帯は「田代」と呼ばれる場所だった。

そして正しい読みかたは「ヨシッぽり・たしろ」だったのだ。

 

では、「ヨシッ堀」とは何だろう。それも地図にしっかりあった。

川として描かれている!

つまり、ヨシッ堀田代は「田代にある、『ヨシッ堀』という川が通っている場所」という意味だったのだ。

 

ヨシッって何よ!?

深呼吸してすっきり。

10分後、頭の中で猫が荒ぶり始めた。

よく考えると、地名に「ヨシッ」が入る理由の説明ができていない。なぜ「ヨシッ堀」なんて変な名前がつけられたのだろう。

こういうときはもう一度本の世界にもぐろう。先ほどの地図の横には、地名の説明が文章でもしたためられていた。

お、ヨシッ堀田代もある。どれどれ。

ヨシッ堀田代と名づけられるヨシの生えた湿原を進み、ヨシッ堀の小さな流れを渡る。

答えあった。

ヨシッ堀の由来は植物の「ヨシ」だったのだ。

では「ヨシ」ってどんな植物なんだろう。調べると、ススキみたいな穂の植物が出てきた。

ja.wikipedia.org

これ、見覚えありますね。

ヨシッ堀田代で撮った写真にも、

ヨシッ堀田代の鐘を撮ったときにも、

なんなら朝に撮った写真にもヨシがいるではないか!

ヨシッ堀田代で「よくわからんけどヨシ!」と言った自分が恥ずかしい。

ヨシッ堀田代には「ヨシ」があった。

鮮やかな伏線の回収っぷりに、思わず「よしっ」とこぶしを握った。

 

すっきり

こうして謎は解けた。すっきり。

帰りのバスに揺られながら頭に浮かぶのは、尾瀬の景色だ。

地名をたどるのは楽しかったが、それ以上に尾瀬は歩いていてひたすら気持ちよかった。

真夏でも涼しくていい景色があって休憩どころもそれなりにある。

尾瀬、オススメです。

ただし、あくまでも尾瀬は山だ。装備はきちんと整えてほしい。

くれぐれもご安全に!

また行きたい!