
映画の「翔んで埼玉」が好きだ。最初に見たときは人目に隠れて「埼玉ポーズ」をするマイブームが1週間続いた。
映画を見ていて一つ気になることがあった。「都会指数」だ。本編によると、「東京とつくスポットの数」が都会指数に影響するとか。
実際に求めたらどうなるんだろう。
※映画「翔んで埼玉」のネタバレが含まれています。
※埼玉、千葉、神奈川をディスるような記述が出てきますが、現実ではなくあくまでも「翔んで埼玉」の世界観をもとにしたものになっています。ご理解をいただければと思います。
「都会指数」を求めよう
そもそも都会指数とはなんぞや。本編によると、
「その人間がどれだけ都会的な環境で生活しているのかということ」
とのこと。
ところで、都会指数を測るのってどうやればいいんだ。そう思いながら「翔んで埼玉」を見ていると、ある場面で思わず立ち上がりそうになった。
千葉県側の人が言い放ったこの言葉に注目だ。
「(前略)おかげで、千葉に東京と名のつくものを多く作ることができた。
東京ドイツ村、ららぽーと東京、伊藤ハム東京、東京ベイシティ交通。
東京を名乗ることで、千葉の都会指数は年々上昇している!」
ここからわかることがある。

つまり、「『東京』がつくスポットの多さ」を調べればいいと!
こうして、都会指数を調べる足がかりができた。
東京の数を数えよう
ということで、「東京」がつくスポットの数を数えよう。
歩いて数えると一生が終わってしまうので、インターネットの力を借りることにする。調べると、「Yahoo!ローカルサーチAPI」なるものが見つかった。
簡単に説明すると、地図情報のデータを簡単に呼びだせるwebサービスだ。しかも無料で使うことができる!(回数制限あり)

これにより、「神奈川県鎌倉市にある『東京』がつくスポットは26件」といったデータがゲットできるようになった。ありがとうインターネット。
これでスポットの数は良しと。
都会指数の計算式を作ろう
あとは都会指数の計算式を作ろう。
できたのがこちら。

「東京が含まれるスポットの数」を「面積」で割っているのは、広い自治体が有利になってしまうのを防ぐためだ。
都会指数の結果は!
今回測るのは、物語の核である「埼玉」とそのライバル「千葉」「神奈川」の三県だ。東京の下で競い合っている彼らの都会指数は、どのような姿を見せてくれるだろう。
さっそく、結果を見ていこう。
どどん。
おお! いい具合にばらけた。しかも東京23区(オレンジ部分)を中心に都会指数が小さくなっていく傾向がきれいに見える。
トップは千葉県の浦安だ。「東京ディズニーランド」がある場所、やはり強し。
では、順番に上位の自治体を見ていこう。
見えてきたのは、三県それぞれが独自に「都会指数を上げるための戦略」を練っている姿だった。
浦安から見えてくる千葉のしたたかさ
映画では、東京に取り入ろうと表と裏の両方で暗躍していた千葉。そんな千葉の浦安市が、都会指数でも堂々の1位を勝ちとった。
では、浦安市の都会指数の高さの理由はなんだろう。でもどうせディズニーランドだろうな。
そう思って調べていると、手が止まった。
ディズニーじゃなかった。
見えてきたのは、東京ディズニーランド誘致よりも大規模な作戦の痕跡だ。
その正体は、浦安にある東京スポットを見ればわかる。

千葉は大胆にも「東京ベイ」という地名を名乗ることで、都会指数を上げていた。
東京と名のつくスポットは埼玉や神奈川にもある(埼玉の東京国際大学や神奈川の東京料金所など)。
しかし、地名丸ごとに「東京」を入れるというしたたかさよ。意地でも東京に近づいていく、そんな千葉の意思の強さがうかがえる。
埼玉が千葉に足をすくわれていた?
そういえば、東京ベイってどういう経緯でできた名前なんだろう。
調べてみると、とんでもない戦いの舞台裏が明らかになってしまった。
ウィキペディアにある由来はこう。
現在、東京湾岸地域は一般に「東京ベイエリア」と呼ばれることがあるが、これはTHE ALFEEが1986年8月3日に東京港13号埋立地(現:港区台場・江東区青海地区・品川区東八潮地区)にある船の科学館近接の未利用地に特設ステージを設けて行った10万人(公称)コンサートのタイトルを「1986.8.3 SWEAT&TEARS TOKYO-BAY AREA」と称したことに由来する。(THE ALFEE-Wikipediaより)
THE ALFEEは、埼玉を代表するロックバンドだ(高見沢俊彦と桜井賢が埼玉出身)。
本編で繰り広げられた「出身地対決」でも、「X JAPANのYOSHIKI」で先制攻撃をしかけた千葉に対して、埼玉は「THE ALFEEの高見沢俊彦」で対抗してみせた。
そんな埼玉の「THE ALFEE」がつけたライブ名を、千葉は全力で利用したのだ。
わずかな隙を見せれば東京にも埼玉にも全力で食らいつくその策士っぷり。千葉、やりおる。
この事実を踏まえて改めて「出身地対決」のシーンを見直してみると、「うおっ」と声が出た。
千葉の人、「嫌いじゃない」って言ってた。その真意は「東京ベイを名乗るきっかけをくれて感謝している」ということか……!
翔んで埼玉、なんて奥深い作品なんだ。
強者の戦略、神奈川
さて、都会指数の話に戻ろう。
東京という地名を取り入れる離れ業で都会度指数を上げた千葉。こうなると誰も千葉に勝てるものはいない。
――と思いきや、2位と3位は神奈川と埼玉がさらっていた。では、策士の千葉に彼らはどう対抗しているのだろうか。
お次は神奈川を見ていこう。
2位の横浜市西区といえば、「みなとみらい」「横浜ランドマークタワー」が思い浮かぶ。まさに「都会」という言葉が似合う場所だ。
さて、西区の「東京」スポット一覧を見ていこう。

大部分が東京の会社になっている。どうやら、東京の会社が横浜に支社を構えていると。
ふむふむ、見えてきたぞ。つまり、横浜市西区の戦略はこうだ。
「都会らしい」空間を作り上げることで、東京の会社を自然と吸い寄せる。さすが、東京に一番近しい存在なだけはある。
神奈川の地力の強さに思わず目を細めた。
あと、東京コンタクトの本社は神奈川だったのね。
埼玉には何もない?
対して、3位のさいたま市大宮区はどうだろう。住宅地のイメージが多いが果たして結果は。

埼玉の会社、多くね? 支社が多かった神奈川とは違う結果だ。
つまりこういうことか。
埼玉は、県民それぞれが「東京」と名のつく会社やお店を作って都会指数を上げようとしていると。
千葉の巧みな戦略と、神奈川の東京を吸い寄せる洗練度。それらを持ち合わせない埼玉がとった戦略は、「草の根運動」だったのだ。
そのけなげな姿に、さらに埼玉を応援したくなってきた。
別の指標で見てみよう
ところで、今回の都会指数では拾いきれない例があることに気づいた。
たとえば、軽井沢みたいな街を思い浮かべてほしい。おしゃれな軽井沢銀座を歩き別荘地に向かう姿は、都会指数が高い人そのものだ。
こういう場所では、広めの敷地に高さ控えめの施設が広がっている。となると、面積当たりのスポット数はどうしても少なくなってしまう。
つまり、スポット数を面積で割る現在の計算式では、ゆったりと土地が使える場所が不利なのだ。
よし、人が少ない場所にも対応した指標を新しく作ろう。

土地が広い場所は人も少ないので、人口で割ってみようか。
結果を出力っと。
思わずガッツポーズが出た。
今までのランキングに影も形もなかった箱根町が1位だ!
神奈川のもう一つの作戦が明らかに
そういえば、「翔んで埼玉」にはこんなシーンがあった。
神奈川は、東京都知事にしゅうまい弁当をくり返し献上することで優位に立っていた。しかし、「しゅうまい」だけでそこまで距離を縮めることができるだろうか。
つまり、神奈川はしゅうまい以外でも何かしらの方法で東京を接待していると考えるのが自然だ。では、どうやって。それが、今回の都会指数から見えてきた。
神奈川の人は箱根を使って東京の人を接待していたのだ。
実際にスポット一覧を見てみよう。

見事に保養所がそろっている。
神奈川は、都会エリアで東京を呼び寄せるだけでなく、箱根エリアを観光地化し、東京の人を呼びこむことでその地位を盤石なものにしていたのだ。
千葉と埼玉に対し余裕の態度をとる神奈川の理由が、今ようやくわかった。
埼玉、がんばれ
都会指数を見るだけでここまで三県の違いが見えてくるとは。翔んで埼玉、深いぞ。
そして、改めて埼玉が主人公になった理由もわかった。
千葉のような大胆さも、神奈川のような力も持たない埼玉。
そんな弱きものが成り上がっていく物語、面白くなるに決まっている。
果たして、埼玉はどこまで高みへ上っていくのか。
その姿を映画館で見られるのが楽しみだ。
ちなみに、僕はこの記事を書いてて初日に行きそびれました。
おまけ:東京都内の都会指数
東京都内でも都会指数αを求めてみた。


