前回の記事ではAIの力を借りながら新しいけなげ組を作り出すことができた。二次創作を通じて満たされると思いきや、心は晴れず新たな葛藤が。それは「こんなにけなげにがんばっている彼らがなんで報われていないのか」という憤りだ。
今回は、「けなげ組」のみんなが笑っている姿を見つけようと公式グッズを探し求めた話。
満たされない渇望感
けなげ組を新しく作ることができた。けなげ組を描くノウハウもできた。これでいくらでも生み出せる。
でもなんでだろう。心がざわつく。この気持ちは何だろう。
悲しい? さびしい? いや違う。これは「怒り」だ。
新しいけなげ組を作るために彼らの心になりきった。そのときに強く感じたことがある。こんなにがんばっているのになんで報われないんだろう、と。
新しいけなげ組の一員を作っても満たされるのは「自分」だけ。100人の彼らの毎日は変わらない。今日も変わらずみんな悲しい顔をしている(※)。楽しそうにしている姿が見たい。笑顔が見たい。
なにか手はないだろうか。
そうだ、こう見えてけなげ組は20年以上続いたコンテンツ。いくら袋の裏というけなげな場所で連載されていたとしても、何かしらグッズがあるはず。そしてグッズになら、きっと明るい姿もあるはずだ。
グッズを調べてみると一つ見つかった。それが「本」だ。
これはいいぞ。普段は見向きもされない中、ひたむきに役割をこなすけなげな存在。そんな彼らが「主役」の本がある。笑ってる姿も見られるかな。表紙をながめてるだけで本屋に走り出したくなる。
本の流通数が「けなげ」すぎる
さっそく買おう! と思い調べてみると思わぬ壁に当たった。どこも売り切れ。唯一アマゾンにはあったけど定価の4倍。うーむ。富豪じゃないからためらう価格だ。
いや、あきらめるのはまだ早い。庶民の味方がいるじゃないか。図書館だ。さっそく検索っと。
まさかの検索0件。このあと調べていて驚くべき事実が明らかになった。東京都の図書館に『けなげ組』は1冊もない。なんてこったい。
いや、まだだ。
図書館は他県から取りよせることもできたはず。
あきらめずに調べてみたところ、関東圏では埼玉県さいたま市の図書館に1冊だけあるらしい! 光が見えた。
あれから10日。
ようやく電話が来た。取り置き待ってたよ!
受話器を置く。思わず頭を抱える。
結論を言おう。まだ届いてなかった。事情がちょっと入り組んでいるので箇条書きで説明する。
つまり、残された選択肢は一つ。あと1週間以上待って、図書館で読んで目に焼き付けて返却するしかない。
早く会いたいよ。
禁断症状が出た
けなげ組への想いがふくらみすぎている。
本を待っている間に映画館に行った。ようやく見られたエヴァはおもしろかった。余韻に浸りながらエンドロールを見ていると、視界のはしに光が。ドアを開けて帰った人がいたっぽい。とつぜん脳裏に絵が浮かんだ。
頭の中はけなげ組でいっぱいに。消える余韻。
けなげ組が欠乏するあまりとうとう日常に浸食してきた。重症だ……。
念願の対面!
連絡を受けてから10日後、再び電話が来た。リクエストをしてから3週間。ようやく本が届いたとのこと! よっしゃいくぞ。
図書館に到着。やっと、心に待ちわびた本に出会える。カウンターに向かう。このときばかりはマスク着用の時世に感謝した。顔がニヤついていてもバレないから。
渡された本は小さかった。文庫本よりちょっと大きいぐらい。でも意外と厚みはある。さっそく席について中を見よう。正直、不安もある。本1冊でこの熱が納まるだろうか。ちゃんと納得いく内容だろうか。
息を吸って吐く。表紙を見る。あれれ? なぜかネットで見た表紙と違うぞ。カバーが外れた状態になっていた。何か書いてある。
(ここからは再現の絵でお届けします。)
不安が吹き飛んだ。間違いない。これはいい本だ。同じように新しいけなげ組を作ってみたからこそひしひしと伝わってくるこだわり。作りこみ。不安が消えた後に残るのは期待だ。いよいよ中身を見てみよう!
旅に出る柿の種くん
本を開くとそこにいたのは会員番号001の柿の種くん。顔はいつもの困り顔だ。
なんとなく……いつもひとりぼっち……。
なんとなく……ボクだけなのかな……。
どこかにお友達いるかも……探しに行ってみよう!
こうして、柿の種くんは仲間を探す旅に出かけた。
ページをめくる。そこにいたのは「カニの細い足」。ページをめくる。次にいたのは「なると」。ここからは、順番に柿の種くんがけなげ組の仲間と出会っていく。
思わず黄色い声がこぼれた。この絵、全部書き下ろしだ! 文章はパッケージの内容と似てるけど(一部加筆修正あり)、絵はすべて描き直されている。で、その絵がとにかくいい。
例えば「カニの細い足」。
みんなの新たな一面を100人分も見ることができるなんて。なんというか……幸せ。
ようやく笑顔を見られるか !?
ときには柿の種くんが仲間と一緒に楽しんでいるページもあった。「"せんこう"花火」をながめたり、「アイロン台」と一緒にスノボーしたり、「ルアー」を追ってダイビングしたり。さらには「使用済みの衛星」に会おうと宇宙まで行ったり! ページをめくる手が止まらない。
でも読んでいて気がかりが一つあった。柿の種くん、ずっと困り顔のままだ。笑顔が1ページもない。楽しいなら笑ってもいいんだよ。
そして全員の紹介が終わった。
たくさんの出会いで、お友達たくさんできたよ。
みんな、それぞれ、じぶんなりに
ちゃんと「けなげ」にがんばってた……。
これからは……ボクだって……。
柿の種くんは仲間を見つけた。きっとこれからの日常もたくさん大変なことがあるだろう。でも、仲間がいればがんばれる。きっとひたむきに生きることができる。そうだ。こういうのを読みたかったんだ。けなげ組のみんなが楽しくすごしてほしいと思ってようやくたどり着いたこの本。
次のページをめくると――
最後のページは全員「笑顔」で記念写真。目頭が熱くなる。「けなげ組」のみんなは後ろ向きに生きていたんじゃない。時に愚痴りながらも、「仲間」との絆を人一倍大事にしながら、がんばってすごしていたんだ。
そう思うと、「けなげ組」という集団も違ったように見えてくる。つらい役目だとしても、仲間がいればがんばれる。仲間と集まって互いに日々の不満をぐちってすっきりして、さあ明日もやるかと前向きに別れる。そんなやさしさで作られた組織だったんだ。
そして「けなげ組」を作ったのは「会員番号1番」の「柿の種」。
そうか。この本は「けなげ組発足の物語」だったんだ。
最後に
本を閉じる。心はやさしさで満たされていた。ここまで楽しめる内容だったとは。「けなげ組」の魅力にあふれた1冊だった。ありがとう。
時には理不尽な目にあいながらも、仲間と一緒にひたむきにがんばる姿。彼らの姿を見ていると、どこか他人事とは思えなくなってくる。人間の社会とどこか似てるなってね。
そんなことを考えながら最後のページをめくる。終わりと思いきや、まだ続きがあった。
そこにいたのは――
参りました。本のほうが上手だった。
「けなげ組」がなくなったことがきっかけに始まった今回の試み。もうさびしさは形もなく、心はすっかり満たされていた。
さあ、「仲間」を見習って明日の仕事もけなげにがんばりますか。
おまけ
今回紹介できなかったが、もう一つ「けなげ組」の笑顔を見られる方法が見つかった。それが「LINEスタンプ」だ。笑顔が見たいけど本を取りよせるのは面倒な人はぜひ! ではあたらめて、
追記(2021/11/26)
さらに続きを書きました。