「パラレルワールドのココカラファイン」が吉祥寺にある

ココカラファインを知っているだろうか。白地にピンクのロゴが輝くあのドラッグストアだ。ある日、吉祥寺にまったく違った姿のココカラファインを見つけた。まるでパラレルワールドココカラファインだ。おもしろそう。ちょっと深堀りすると、同じような店舗が全国各地にポツポツと残っていることが見えてきた。

 

吉祥寺のココカラファインがおもしろい

ココカラファインといえばピンク色の店である。地球が太陽の周りを回っているのと同じ、世の中の真理だ。

そう思っていた。

どこにもあるこういうやつ。

吉祥寺駅を降りたとき、真理が崩れた。

右側にある緑の建物を何となく眺めていると、

見たことないココカラファインに出会った。

ピンク色じゃないココカラファインなんて存在していいものなのか。太陽が世界の中心ではなかったのか。

気のせいではない。

目をこする。頬をつねる。世界は緑色のままだった。頭の中には宇宙が広がって猫が目を見開いている。

謎:色が違うココカラファインは何者?

 

落ち着いて観察しよう

首をかしげていてるだけは何も進まない。いったん足を進めてちゃんと観察してみよう。

施設の異常を見逃さない警備員にも負けない念入りさで店の周りを歩き回ってみる。

すると、新たに二つ気づいたことがあった。

① クローバーをとにかく推している

よく見ると、四つ葉のクローバーがあちらこちらに見える。それも普通の量じゃない。

緑色の場所あればクローバーあり。

店の側面にもグリーンベルトが続いている。

町の一角でここだけ草花が栄えている。都会のオアシスはこんな駅チカにあったのだ。せっかくだからと数えてみると、なんと49個。葉っぱの枚数にすると196枚だ。

吉祥寺といえば自然もある街っていうイメージがあるけど、駅前に緑の隠れスポットがあったとは。

 

② 歴戦の勇者感

もう一つ気づいたことがあった。どこかベテランめいた風格がある。

ココ 、カラダ、ゲン

キャッチフレーズの「ココロ、カラダ、ゲンキ。」がはがれている。新たな「ンョ゛ハー゛」はここにあったのか。

他の場所も似たようなものだった。無事な「ココロ」がない。

ゲンキな状態ではないな。

どうやらこのお店、できたばかりではなさそうだ。

お店の名誉のために言っておくと、古っぽく見えるのは正体を暴いてやろうみたいなよこしまな心で見ているからであって、普通に買い物するぶんには気にならないぐらいだ。

 

吉祥寺のココカラファインは一号店だった?

ここで、わかっていることをいったん振り返ろう。

色が違うココカラファインは何者なんだろう。今わかってる手がかりは二つ。

手がかり1:ロゴが現在と違っている

手がかり2:お店が古め

インターネットに手がかりがあるかもしれない。PCに向き合ってwebの海に潜っていく。

企業の詳しい歴史を調べるときは、投資家向けの情報を見るのが簡単だ。(マツキヨココカラ&カンパニー

すぐに答えが見つかった。思わずまばたきが止まった。そういうことだったのか。

今回訪れた「ココカラファイン吉祥寺南口店」は、「ココカラファインの一号店」だったのだ。

 

その結論にたどりつくためには、ココカラファインの歴史を知る必要がある。とはいっても大事な出来事は二つだけなので、身構えないで読んでほしい。

 

① 「ココカラファインホールディングス」が誕生(2008年4月)

ココカラファインが生まれたのは意外と新しく、2008年のことだ。

北京オリンピックで北島選手が「何も言えねえ」と歓喜し、福田総理が「あなたとは違うんです」とこぼしてしたあのころに、緑色の産声が上がった。

当時のココカラファインの資料を見ると心に緑の風が吹いた。

見覚えのあるマークがある!(2008年3月期 決算説明会)。

ココカラファインホールディングス」が生まれた経緯はこうだ。

薬局のセガミメディクスセイジョーが統合し、「ココカラファインホールディングス」が生まれた。

大事なのは、このときセガミ」「セイジョー」のブランドがそのまま使われていたという点だ。

図にしてみた。円の大きさはおおよその店舗数を表してます。

つまり、この時点では「ココカラファイン」というお店は存在していなかった。

 

ココカラファインブランドの店が登場(2012年5月)

4年後の2012年、ココカラファインに新たな布石が打たれた。

吉田沙保里がオリンピック三連覇と13大会連続優勝をなしとげ、「霊長類最強」と言われるようになったあのころだ。

ココカラファインは買収を重ねて成長しながら、薬局界で勝ち上がる新たな手を模索していた。そして生まれたのがココカラファインブランドの店舗」を作ろうというアイデアだ。

その野望の足がかりとして選ばれた場所が吉祥寺だった。

買収を重ね四つのブランドが共存している中、新顔が生まれた。

つまり、吉祥寺南口は記念すべき「ココカラファイン発祥の地」だったのだ。

 

パラレルワールドココカラファインが他にもある!?

これからは吉祥寺を通るたびに一人心が弾みそう。と、資料を見ていて気になる文章が見つかった。

ココカラファインブランド店舗の出店

販社統合のシンボル的な意味合いである実験店を夏までに3店開店し、ブランドイメージ、訴求方法等の検証を経た後に全店への展開を検討。

2012年3月期 決算説明会

パラレルワールドココカラファインは他にも存在しているのだ。てっきりあの一店舗だけが特別かと思っていたけどそうじゃないのか。

今、異世界転生した主人公が他にも転生者がいることを知って驚く気持ちを味わっている。

 

ではこの「3店」は何者だ。調べると、たしかに2号店と3号店が見つかった。

本当にあるんだ。そして3号店は残っているではないか。となると、行くしかあるまい。朝霞へ。

こうして「ココカラファイン」が目的地のショートトリップが始まった。

 

ココカラファイン朝霞店へ

さあ、朝霞駅に到着だ。家が東京なので、薬局に行くためだけに県境をまたいでここに来たことになる。

もし薬局で買い物するのではなく見に行くために1時間電車に揺られた人が他にいたら友達になりたい。

朝霞駅ではゆるキャラぽぽたん)がなぜか銃を構えていた。調べると、自衛隊基地がある上にオリンピックの射撃が行われた場所だったとか。

ぎょうざの満州」を見ると埼玉の人がうらやましくなる。餃子だけでなくラーメンも安くておいしいしとにかく居心地のいい店だ。

ココカラファインだ! と思ったけど違った。

15分歩いたところに、見覚えのある文字が目に入った。思わず足が止まった。

あった。ピンクじゃないココカラファインだ。

やはりこれもピンク色じゃなかった。でも緑でもないのか。「実験店」だけに、このデザインも新たな試みの一つだったのだろう。

近づくと吉祥寺のココカラファインと同じ特徴が見えてきた。それが「風格」だ。

継ぎ目から10年間の重みを感じる。デザインは継ぎ足さずに使っております。

入口は新旧混じったデザインになっていた。赤い帯がはがれかけていて思わず応援した。

ちなみに、店内はいたって普通だった。
吉祥寺店との違いは、駅前ではないのでお客さんが3人ほどで静かだった点だ。心なしか進む時間が穏やかだった。こういう場所なら静かに暮らせそうだ。

朝霞には、また吉祥寺店とは違った良さのココカラファインと出会うことができた。

 

ここからは蛇足になるが、帰り道に看板を見つけた。

地域の看板、よくあるやつだ。

こういう標語の看板はよく見るものだ。でも、実際知らない人に挨拶する街ってそうないよな。そんなことを考えながら歩いていると、

「こんにちはー」

えっ?

目をやるとそこにはお店の前に立ってる笑顔のお姉さん。思わずあせって会釈しかできなかった。

さらに50メートルほど歩いたころだろうか。

「おかえりなさい」

今度声をかけてくれたのは交通整理をしていた警察のおばちゃん。

「ただいま」

思わず返事していた。これから電車で帰るところだけど。

朝霞、優しい街だった。便利なドラッグストアもあるし餃子の満州もあるし、もし埼玉に住むことになったらここにしよう。

よさこい祭りの季節にも行ってみたい!

 

ここからさらにマニアックな話

さて、パラレルワールドココカラファインが吉祥寺と朝霞に残っていることがわかった。となると気になるのは「デザイン違いのココカラファインは全部で何店舗あるのか」だ。

試しに会社に問い合わせてみた。翌日に返事が来た。

現在、数店舗にて色合いの違う看板等が採用されております。

なるほど。ならば自分で調べてみるしかないな。

さて、調査結果を先に言おう。パラレルワールドココカラファインは全部で9店舗残っていることがわかった。

 

9店舗にたどりつくためには、「現在のココカラファイン」が誕生するまで歴史をなぞる必要がある。この流れ、さっきと同じだ。

さらに深い話になるが、ぜひついてきてほしい。

 

いったんおさらいをしよう。

ココカラファイン1号店が開店したときの状態を復習だ。

2012年に旧ココカラファインの店舗が吉祥寺にはじめて生まれた。しかし、そのデザインは現在と違ったものだった。

では、ピンク色のココカラファインはどうやって生まれたのだろう

 

ココカラファインが再編成される(2013年4月)

吉祥寺南口店が生まれた翌年のことだ。ココカラファインに激震が走った。

今まで子会社でバラバラだった各薬局を全部一つの会社にまとめたのだ。こうして新会社「ココカラファイン ヘルスケア」が生まれた。

この変化にともなって生まれたのが現在のココカラファインのロゴだ。

会社の変更と同時に新たな方針が生まれた。現在の店を「ココカラファインブランドの店に変えていく」ということだ。

全薬局ココカラファイン計画。

本題に戻ろう。パラレルワールドココカラファインについて、こうは言えないだろうか。

ココカラファイン1号店が生まれた日」から「ココカラファインが再編成された日」の間に開店した「ココカラファイン」はデザインが今と違っているはずだ。

こんがらがってきたので図にしてみた。ちゃんと伝わっているだろうか。

 

パラレルワールドココカラファインは13店舗存在した!

ということで、2012年5月~2013年4月の間に開店したココカラファインを知りたい。が、どうやって調べればいいんだ。教えてグーグル先生!

グーグル「あいよ! これはどう?」

あるんかい。こういうときインターネットがある世界で良かったって思う。

で、調べてみた結果が先ほどの結果につながる。一覧にしてみた。

つまり、パラレルワールドココカラファインは13店舗あった。そして9か所は今も当時のまま残っている!

東の茨城から南の福岡まで、こんなに広い範囲で残っていたのか。

 

終わりに

2021年、ココカラファインマツモトキヨシが合併し、新たに「株式会社マツキヨココカラ&カンパニー」が誕生した。ただしブランドはそれぞれ別々のものを使っている。

この展開、ココカラファインの始まりと一緒だ。ということは、将来はまた「マツキヨココカラ」の実験店がどこかに生まれるかもしれない。

人は時間とともに変わっていく。街も変わっていく。そしてココカラファインも変わっていく。人生と同じだ。

だからこそ、そんな歴史の小さな一ページをここに残すことができて満足だ。

最近クローバーマークがあると目で追ってしまう。

 

さらに見つかってしまった

さあ、謎は解けた。満足しながら画像検索していたときのことだ。PCに向かっていて思わず「えっ」と声が出た。

別の「パラレルワールドココカラファイン」を見つけてしまった。

しかもオレンジ色だ。調べたところ、どうやら2012年11月には「ドラッグセガミ」からリニューアルしたっぽい。

つまり、「旧ココカラファイン」の新規開店と並行して、系列店の一部も「ココカラファイン」としてリニューアルしていたのか。

パラレルワールドココカラファインは13店舗より多かったのだ。

今のところわかっているのは「香里ケ丘店」「苅田店」「瓢箪山店」の三つだ。もし他にもあればぜひ教えてほしい。