アイヌ差別の話に思うこと

アイヌ差別の話が話題になっている。

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この記事を読んで、ふと半年前に見たアイヌ舞踊のイベントを思い出した。

 

昨年の夏、家族旅行で北海道に行き、然別湖のホテルで1泊した。
ホテルは行楽シーズンであるせいもあり賑わっており、それに伴いイベントも用意されていた。
その中の一つがアイヌ舞踊だった。

ホテルのバイキングを堪能しレストランを出ると、フロントにステージが作られ人が数十人座っていた。
アイヌ舞踊が始まるらしい。私はあまり興味がなかったが、家族は乗り気だったので見ることになった。
イベントでの舞踊というと「これが文化だ!」みたいな雰囲気で独特の踊りを踊って異文化を感じるというイメージがある。それでは文化の表面をなぞっただけで、分かった気にしかなれないのではないか。だからあまり気は進まなかった。

ステージが始まった。最初は儀式的な踊りで、男性が荒々しい動きで舞を披露するものだった。
次の踊りでは若い女性も登場したが、全体的に硬い雰囲気で踊っており(真面目な儀式なので仕方のないことだとは思うが)あまり面白くなかった。
また、その踊りに合わせてずっと歌っているおばあさんもどこか凄みがありどこか怖い雰囲気だった。
私は踊りを見ながら「どういう思いで踊っているのだろう」という疑問が頭の中で大きくなっていった。
おばあさんは文化を守るために踊るみたいな使命があるのではという予想はできる。しかし、若い人はどうなんだろう。実は嫌々やっているのではないか、なんて意地悪な考えもしたり。

「これで最後の踊りになります。最後はお客さんにも一人参加してもらいます」
中年のおじさんが一人指名された。どうやら夫婦連れで来ているらしい。
踊りが始まった。左右に若い女性。真ん中におじさんが胡坐。この踊りで会場の雰囲気は一変した。
左の女性がおじさんをくるっと回し左を向かせる。すると今度は右の女性がおじさんを回し右を向かせる。そう、一人の女性を取り合っている踊りだった。
一気に会場は笑いの渦に包まれた。奥さんも思わず苦笑い。
私も今までと異なる俗っぽい踊りに、面白さとともに「アイヌ民族も同じ人」だとを強く感じた。正直おじさんと代わりたいとすら思った。
踊りが終わったのちに、舞踊しているメンバーが全員家族であること、色々な場所で公演を行っていること、次はスタジアムで舞うことなどを教えてくれた。おばあさんが一気に息子や娘と一緒に楽しく舞台に出ている優しい存在になった。

 

いい公演だった。
アイヌの人々も泣いたり笑ったりするし、恋もする。そしてときには男女で修羅場になる。そんな当たり前のことを今回の公演で強く教えてくれた。
アイヌ民族に限った話ではないが、文化に優劣を付けずに違いを楽しめるようにありたいと思う。