古道を歩いて富士登山しようと頑張った記録

突然、9月にまとまった休暇が取れた。特に予定はない。なんかやりたいことはないか自問自答してみる。そうだ、村山古道を歩こう。計画的というよりも突発的なきっかけだった。

村山古道との出会い

村山古道とは、標高0メートルから富士山まで続いている古道のことで、明治時代に廃道となった。しかし21世紀になってから再整備され、今に至っている。
私が村山古道に興味を持ったのは『富士山・村山古道を歩く』という本を見つけたことだった。作者は村山古道の再整備の中心となった畠堀操八氏。道中には道祖神や石碑などが残り、富士山信仰の息吹を感じることができるという。
ネットで検索してみると、住宅街や山の中を進んでいく楽しそうな記事がいくつか出てきた。

@nifty:デイリーポータルZ:海抜0mからの富士登山

d.hatena.ne.jp

これはいける。面白そう。そう思い行くことに決めた。

準備

最初に『富士山・村山古道を歩く』を買う。実は内容を読んでいなかったので、準備と並行して読み進めていくことにした。
次に必要なのは登山の道具。安物のハイキング装備しか持っていなかったので、いい登山靴をリュックを買った。雨に備え、雨具と通気性のいいズボンを買った。
道具が揃ったらルートを決める。

ルートを調べる

最初に村山古道のルートについて簡単に紹介する。出発は静岡県の吉原。海の近くに富士塚があり、そこから出発する。北上し村山浅間神社をすぎるあたりから本格的な登山道になっていく。そして六合目で富士山の一般的な登山道である富士宮口登山道と合流し、以降は通常の登山と同じルートとなる。吉原~村山浅間神社の地図を載せておく。

※ 地図上のルートはイメージで村山古道ではないので注意

 調べていると、山頂を目指すには大きな問題があることが分かってきた。9月に富士山に行くと、とても寒いうえにトイレが使えないという。そのため、今回は富士宮口登山道にある五合目をゴールとすることにした。五合目からはバスが出ているため、楽に下山できるというメリットも嬉しい。
さて、ルートを決める。出発地は静岡県吉原駅、目的地は富士山登山道の富士宮口五合目。迷うのは困るので、地図がほしい。調べてみると、村山古道の地図を通販で売っているという。しかし準備がギリギリなため、発送が間に合わない危険性がある。そこで見つけたのが、「ヤマレコ」だ。

www.yamareco.com

ヤマレコは登山ルートの記録と共有ができるサービスで、村山古道に行った人が記録を残してくれていた。しかもこれ、スマホアプリ「ヤマレコマップ」を使えば実際の位置とルートを比較できるのだ! これは実際の登山時にとても重宝した。

 宿泊場所

ヤマレコの地図により、詳細な位置がわかるようになった。ここで考えないといけないのが、宿泊場所だ。一日目を終える場所でちょうどいいのは、村山浅間神社付近。調べてみるとちょうどいい場所に「村山ジャンボ」という宿泊施設を見つけた。しかし調べてみると、サークル合宿など団体専用の施設であることが分かった。

murayama-jumbo.com

ネット記事ではテント泊をしている人もいたが、私にはそんな技術はない。他にも泊まれそうなラブホを見つけたが、一人で泊まる度胸はないし、心理的に休めない。結局最寄り町の富士宮のホテルを予約することにした。最寄り町といっても村山浅間神社から直線距離で5キロ以上ある。
しかし直前になって新たな事実が分かった。『富士山・村山古道を歩く』を読み進めると、村山ジャンボは村山古道に行く個人客も泊めてくれると書いてあったのだ。ホテルを予約してしまったあとだったので、電話してもきっと空いてないだろうと自分に言い聞かせる。もっと早く読んでおくべきだった。

残った心配事

準備が整ってきたが、二つ問題が残った。
一つは天気だ。それもただの雨ではなく、台風が来ているらしい。しかしどうしようもない。準備した雨具はユニクロ製。高くてもゴアテックスの雨具を買っておくべきだったかもしれない。
二つ目はルート。実際に村山古道を登った記事を読むと、どの人も楽しく登っている。しかし、書籍を読むと思った以上に過酷な場所であることが分かってきた。前半は舗装された道だが、後半は倒木の下や涸れ沢を通ることとなる。大雨時に涸れ沢を通るのは危険だ。さらに道が曖昧で迷いやすい場所が複数あるらしい。大きな不安を抱えながら現地に向かうこととなった。

 

出発(9月21日)

九州や四国で猛威を振るっていた台風だが、前日に温帯低気圧に変わった。台風でなくなったのは有り難いが相変わらず天気は悪く、新品のリュックにカバーをかける。トイレを済ませ準備完了。9時20分、静岡県吉原駅に到着し、旅が始まった。天気は悪いが、はじめての地に心が躍る。
最初に行くのは富士塚。かつての登山者が必ず寄っていた場所だ。ここの富士塚は珍しく石で作られている。

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ちなみにこのアングルは絶好の富士山スポットで、天気が悪くなければ背後に富士山がよく見えるらしい。

街並みを歩く

最初は広めの道沿いを歩いていく。登り坂も緩やかでとても歩きやすい。雨が降っていなければ快適だっただろう。
歩いていると、結構な頻度で古道の跡が見られて目を楽しませてくれる。

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神社や一里塚、馬頭観音など種類は様々で、かつての繁栄を想像すると楽しくなってくる。

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でも富士山が見える兆しはない……。

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しばらく歩いていると商店街に出た。吉原商店街だ。ここはかつての宿場町があった場所だという。かつての中心地なだけはあり、両側にひたすら店が続いている。しかし歩いている人がいない。当時は不思議だったが、今思うと平日の朝10時なのだから当然のことだった。

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商店街をすぎると、しばらく大通り沿いを歩くことになった。さらに雨が強くなってきた。写真ではわかりづらいが、路面の濡れ具合を見て察してほしい。雨具で蒸れ、速乾性だが撥水性が弱めのズボンはじわじわと濡れてくる。単調な登坂に飽きてくる。

のどかな道

東名高速道路をすぎたあたりで、雰囲気が変わった。道幅が狭くなり、大きな建物がなくなり空が広くなる。

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歩いている人はおらず、のどかな光景を独り占め。この景色を見られただけでも来てよかったと思える。雨も弱まってきたし最高だ。

古道の跡については、今までよりこじんまりとした古い石碑が出てくるようになった。

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しかも結構な頻度で目を楽しませてくれる。
そしてこの辺りから現れるのが、村山古道の標識だ。

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富士山の絵が描いてあるのが見えるだろうか。江戸時代は富士山を3つの峰で表したという。遥か昔に多くの登山者がここを歩いていたと考えると感慨深いものがある。

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しばらくのどかな風景が続く。まったりと進んでいく。

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雨もようやく止み、富士山を少しだけ見ることができた。その後ちょうどいい公園がなかったため、道端で休憩し昼食を摂る。

峠道へ

13時になろうかというとき、道を右に曲がりずっと歩いてきた道を後にする。

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ここから道が細くなり、山道に近い勾配になってきた。同時に古道らしさも感じられるようになってきた。

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細い道ではあるものの、右端には色々な石碑があり何とも言えないいい雰囲気を醸し出している。

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とてもいい雰囲気の神社を見つけた。ここの上には千と千尋の世界が広がっていても驚かないような絶妙な荒廃具合。進もうかと思ったが、急な階段が濡れていて滑りそうなのと蜘蛛の巣が多かったのでやめておいた。

 

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両側が畑だったのが林になり、坂が急な峠道になった。 たまに通り過ぎる車のスピードが速く、少し怖い。

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この辺りから霧が出るようになった。写真はうまく補正されているが、鬱蒼とした林で昼なのに暗く、さらに霧がかって視界が悪い。暗い洞窟のような、長居したくない雰囲気が漂っていた。

村山浅間神社

鬱蒼とした道を越えると広けた場所に出た。村山浅間神社に到着だ。

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神社はツアーか何かの団体客がいてにぎやかだった。そそくさと後にする。
時間は13時30分。思った以上に早く着いた。歩いた距離は20kmほど。足は疲れているがまだ余力がある。これなら明日も行けるかもしれない。希望が見えてきた。

山道の入口へ

体力にはまだ余裕があり時間も早い。そこで、もう少し進んでみて村山古道は歩きやすいのか調べてみることにした。
入口は村山浅間神社をしばらく左に進んだところにある。

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最初は石畳みの道が続いている。歩いてみると、とても滑りやすい。きちんとした登山靴を履いているのにバランスを崩しそうになる。一歩一歩気を付けないと転びかねない。幸い、石畳みの道は最初の一部分だけだという。

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気を取り直して進むと掘割のような道になってきた。道の先に何かが見えるような……?

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正体は倒木だった……。本の内容には木をくぐって進むような描写があったが、まさかここまで手前にあるとは思わなかった。今回は頭上だから問題ないものの、これが多くあるなら悪天候の中進むのは難しいかもしれない。しかも地面はぬかるんでいて歩きづらい。

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さらに進んでいくと似たような倒木がまだ続いていることが分かった。これはきついかもしれない。暗雲が広がるのを感じつつ、今日は引き返すことにした。明日のことは宿に着いてから考えよう。

富士宮

今日のホテルがある町、富士宮へ向かう。

富士宮までの距離は約7km。今日歩いてきた距離と比べれば余裕だろと思って歩き始めると、異変が起きた。膝の関節がしくしく痛み始めたのだ。経験上ケガではなく歩きすぎによる疲れなのはわかるのだが、これがなかなかつらい。突然痛さが顕在化したのは、おそらく富士宮への道がずっと下っているからだ。下りのほうが上りよりも負担が大きいのは知っているが、まさかここまで極端に足にくるとは思わなかった。一歩ごとが痛く、富士宮までの道のりは今までの20kmよりも長く感じた。

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ようやくお宿到着! スーパーホテルは安いのに部屋がきれいで温泉付きで朝食無料と素晴らしかったのでぜひまた利用したい。

決断

次の日。外は相変わらずの雨。足には昨日の疲れが残っている。スタート地点はここから7km先。この状態で村山浅間神社まで歩きさらに5合目まで辿り着ける自信はなく、仕方なくここで断念することにした。残念だが背に腹は代えられない。次来るときは絶対登ってやると決意しながらも、今回は断念となった。
この後富士山駅に移動して駅から忍野八海まで歩いて行ったら遠くて無駄に疲れることになったり、富士吉田口の一合目から五合目まで登ろうとして再び雨に体力を奪われて心が折れかけたりしたのは、こことはまた別の話。

村山古道に挑みたい人へ

今回準備していて困ったのが、村山古道に臨む際に具体的に何をどう準備しておくべきか書いてある記事がなかったことだ。そこで、今回の旅を通して大事だと思った点をここに残しておく。

ヤマレコのアプリはすごく便利

ヤマレコを使えば、今いる場所とルートを比較することができる。特に村山浅間神社をすぎてからは道があいまいな場所があるというので重宝する(と思う)。

村山ジャンボに泊まるべし

村山ジャンボはちょうど吉原と五合目の中間地点にある。テント泊をしないなら利用しない手はないだろう。

地図を買おう

スマートフォンが使えなくなる可能性はゼロではない。通販で買っておくと万が一の時に役立つはずだ。

『富士山・村山古道を歩く』は必読

ネットの記事よりもずっと詳細に歩き方が載っている。また、道の歴史や謂れも書いてあるので読んだ後に歩くとより楽しむことができる。

最後に

今回は本格的な登山になる準備不足と天候不順により手前で引き返すことになったが、村山古道の魅力を強く感じることができた。今度はきちんと準備をして今度こそ五合目までたどり着きたい。待ってろ村山古道!