最近街を歩いていて気になるものがある。
このマークだ。杉並で育ち二十数年、割とよく見るマークなので今まで気にしたことがなかったのだが、ふと気になった。よく考えると謎が多い。マンホールなのかと思いきやよく見ると違う。でもいくつも見るので何か意味があるはずだ。そこで、足を使って正体を調べてみることにした。いざ!
阿佐ヶ谷駅から商店街を行く
スタートはここ、阿佐谷。区役所がある杉並の中心地だ。JR阿佐ヶ谷駅前から始まるこの商店街は阿佐谷パールセンター。実はここに例のマークが複数ある。さっそく順番に辿っていこうと思う。
歩いていくとぽつぽつとマークが点在して見つかる。しばらく辿ってきて、法則性に気付いた。上の2つの写真で分かる通り、どうやら道が分かれているところにどちらに進めばいいか教えてくれているようだ。でもどこに向かっているんだろう?
発見1:謎のマークは道が分かれた時に教えてくれる
さらに進むと、商店街が2つに分かれる。さてマークはどうなるか。
右にはマークがなく左に2つ。これは左に進めということだろう。真っ直ぐ進んで少ししたところで新たな発見。地面に地図があった。
発見2:道を教えてくれる地図がある
これでマークが何かの道を表していることが確実になった。ここで突然一気にテンションが上がってきた。これはRPGでダンジョンを移動しているときの楽しさと同じだ。先に何があるのかわからないままダンジョンを進み、時に予期せぬイベントに遭遇しながらだんだん目的地に近づいていくワクワク感だ。
発見3:謎のマークはどこかへの道を示している
しばらく歩くと商店街が終わり、大通り(青梅街道)にぶつかる。ここで道を渡って向こう側に行くときにマークが分かりづらく少し迷ったが、さっきの地図のおかげでなんとか辿ることができた。
ここを右へ曲がる。ここからは閑静な住宅街になる。
嬉しいことに、住宅街ではマークが道路上だけでなく側溝の蓋にも付いてくれるようになった。これでマークが増え分かりやすくなった。
発見4:側溝にもマークがある
特に曲がるときのナビゲートが親切で分かりやすい。引き続き落ち着いた住宅街をのんびり歩いていく。
しばらくすると公園に出た。梅里中央公園だ。
ここでまたRPGのような発見があった。
「レアなマーク」発見! 謎のマークはSSRとあるのでこのマークはURだろうか。なんのマークだか分からないが、なかなか粋な工夫だ。今後も見つけたらコレクションしていきたい。
発見5:レア度の高いマークが紛れ込んでいる
川を進む
公園の後は大通りを一つ越え再び住宅街へ。ここでまた迷った。
しばらくして行き過ぎたことに気づき戻った。このあたりが最後に例のマークを見つけた場所だ。真っ直ぐ行ったが違っていた。どこだ??
正解は――
「右の道の奥」。これはパッと見ただけでは分からない……。細い道を左に曲がると視界が開けた。
暗渠だ!!
暗渠とは川の跡のことで、普通の道とは違った景色を楽しめる。愛好家がいて、私も最近その魅力に気づきよく暗渠を歩いている。
高低差を感じる階段とか、
古ぼけた塀から感じる圧迫感とかがたまらない。
発見6:細い道も通っている
しばらく暗渠が続く。ここで気づいたが、この道を辿る行為は、複数人数だとより楽しめるんじゃないかと思う。時には住宅街を、時には商店街を、そして時には裏道を歩き、時にはマークを見失って探し回る。みんなでワイワイ話しながら進めば間違いなく楽しいはずだ。そう考えるとふいに一人で歩いているのが寂しくなってくる。
ちょっと死にたくなった。
気を取り直して歩くこと十数分、暗渠の終わりが見えてきた。暗渠と川(善福寺川)の合流だ。
さてここから川沿いをしばらく歩く。春になると桜が一斉に咲き花見客でにぎわう川辺も、冬空の下では人がまばらだ。
鴨を猫が狙っていた。
しばらく歩くと善福寺川の橋を渡り向こう側に行き、再び住宅街に入る。
商店街あるところ住宅地あり
住宅地を抜け、大通りを渡ると一気ににぎやかになった。
どうやらここは京王線浜田山駅のメインストリートのようだ。お洒落な店が並んでゆったりとした道幅がある優雅な雰囲気の商店街だった。人も多くなかなかに活気がある。
踏切を抜けて再び住宅街へ。
住宅地の中にゴルフ専門学校なんてものがあるとは……!
清掃工場が見えてきた。偶然改修工事中だったようで、煙突の表面がはがれてて格好いい! こういう滅多にない発見に出会えるのも街歩きの醍醐味だ。
この先も大通りを抜け住宅街を歩き続ける。今まで以上に住宅街が続いている。住宅街から抜け出せない。だんだん家を眺めて楽しむ余裕がなくなってきた。
ついに明かされるマークの意味
疲れがたまってきたころ、宮前公園に着いた。ここが変わっていた。
入口には竹林。中には不思議なオブジェがある。そして「知る区ロード 耳のオアシス」の文字。マークの手がかりになるかもしれないと思いスマホで調べた結果、とうとう答えにたどり着くことができた。
1988年、①防災②まちづくりの意識啓発③いろいろな施設やまちの資源を知る④高齢化社会の体力づくりと余暇活用⑤杉並区という意識を作る、という5つのコンセプトの基に区を知る道、『杉並「知る区ロード」』が始まりました。
このルートをたどると、神社仏閣などの名所旧跡、大きな公園、主だった区の施設などに出会えるようになっています。
ルート上にはオアシスと呼ばれる休憩所があります。
全部で4箇所のオアシスがあり、人間の五感をテーマにした休憩所となっています。
このマークは、区をもっと知るために知恵を絞って作られたものだったのか。確かに裏道や表通り、公園を通ることで街をさらに知ることができた。体力づくりとしても、今日はすでに10km程度歩いているのでいい運動にもなっている。杉並区、なかなか素敵な企画を作るじゃないか。区に対する愛着がさらに沸いてきた。
ところでこの遊具、耳を当てて音を聴いて楽しむものらしいが、数メートル先で子供たちが賑やかに遊んでいたので恥ずかしかったしやめておいた。
発見7:辿っている道の名前は「知る区ロード」
発見8:名所を辿っていて、4つのオアシスがある!
ラストスパート!
さてこの後、住宅街を進み荻窪駅に到着。その先へと越えていく。疲れがたまっているが、スタート地点の阿佐谷と荻窪駅はたった一駅。終わりが近いと考えると力が湧いてくる。
ここで再び暗渠へ! この暗渠、かつては荻窪から5駅先の大久保あたりまで続いていた川で、桃園川と呼ばれていた。最初に通った暗渠と違い整備されていて、小奇麗な道が続いている。これはこれでありだ。歩きやすい道と左右の自然が疲れを労ってくれているように感じる。
暗渠沿いに進むと「時のオアシス」があった。
入口の床が時計になっていて格好いい。
日時計もあった。芸術家ではないのでうまくは言えないが、なんとなく神聖でありながら落ち着くような雰囲気を感じた。ここに座って読書をしたらとてもはかどりそうだ。
暗渠に戻る。暗渠は何回か姿を変えながら続いていく。
川の流れを意識して蛇行している粋なデザインの場所もあった。
しばらく歩くと暗渠を離れ、住宅街に戻る。そしてその先に3つ目のオアシスが見えてきた。
ここははなのオアシス。
香炉。知る区ロードのイベントを行うときに実際に焚くらしい。もちろん今日は焚いていない。
これはパイプの横のボタンを押すと香りが出てくる装置。押してみたが、残念ながら反応がなかった。動作が止まってしまっているのだろうか。はなのオアシスでは、せっかく作ったものなのに使われていないものが多く、哀愁を感じた。せっかくここまで面白いものを作っているのだから、何とか利用できないものだろうか。
マークに従い歩いていくと、中杉通りに出る。もう阿佐ヶ谷駅はすぐそこだ。
最後に大通り(中杉通り)をまたぎ歩き、神明宮に出る。最近はアニメ「アクエリオンロゴス」に出てきたり、「私以外私じゃないの」のPVに使われたりと意外と話題になっている神社だ。
そして通りを歩くと、
ゴール! お疲れ様でした。時間はちょうど17時、「夕焼け小焼け」が流れてきた。
感想
杉並の裏側を知ることができたようでとても面白かった。約15km歩き疲れはしたが、それ以上に冒険した後のような心地よい達成感が残った。
しかしそれ以上にこの謎のマークが「杉並をもっと盛り上げたい」という熱い思いから生まれたものだということを知ることができて良かった。最初はRPG感覚で何か見つかればいいだろうと軽い気持ちで辿り始めたが、とても興味深いものを知ることができた。
しかし、ここで一つまだ解決していないことがある。先ほどの知る区ロードの文章を再掲する。
全部で4箇所のオアシスがあり、人間の五感をテーマにした休憩所となっています。
しかし今回は3つのオアシスしか回っていない。残りはいずこへ??
そこで知る区ロードについて調べてみて愕然とした。実は今回歩いたコースは、ほんの一部だったのだ。これを見てほしい。
出典:http://www.suginami-siruku.org/what.html
知る区ロードは2つの輪からなる道で、今回通ったのは「真ん中の輪」だったというのだ。
なんてこった。嬉しい悲鳴だ。また一つ、いや二つ楽しみが増えた。今度は友達を誘って行ってみようかなと思う。もちろん地図にはなるべく頼らない方針で。
発見9:知る区ロードには3つのコースがある
おまけ:見つけたレアマーク集